●朝鮮学校にだけ学費補助がなされていないことが、いつも気になっています。調査で朝鮮学園を訪れるのは、3回目となります。
いくつかの経緯はありますが、2017年以降神奈川県は、他の外国人学校には行っている学費補助を朝鮮学校にだけ行っていません。
教科書に拉致問題を明記する改定が行われていないという事を理由としています。でも学校にも生徒にも教科書を変える権限はありません。しかも教科書記載内容など自治体がチェックすることではありません。
●今回は、生徒の方にお話を聞く機会を設けて頂きました。
私は、皆さんに「朝鮮学校にだけ学費補助がなされていないことをどう受け止めているのか、率直に聞きたい」と切り出しました。
それに対して共通して語られたのは、「生活が苦しい中、補助が無いため経済的負担が大きくなるのに、朝鮮学園に通わせてもらって親に申し訳ない気持ち。でも感謝している」
「民族が違うというだけで、高校無償化からも学費補助からも排除されているのは、本当に悔しい」
でも「日本の皆さんが応援してくれるのが、うれしい」「自分たちのことではないのに、どうしてここまで支援してくれるのか不思議だった」「日本の人に『しんどい思いをさせてごめんね』と言われた時は勇気づけられた」など心ある人への感謝の言葉も続きました。
そして、「差別されている事態を、自分の手で変えていきたい」という決意も、皆さんから語られました。
川崎から通っている方からは、ヘイトスピーチやヘイトデモにも出会うことがあり、「近くを通るだけでも怖い」「学校に行くのも気が重くなる」「本当に悔しい」などの思いが語られました。
「日本の友人がいるか」と聞きました。悔しい思いをたくさんしながらも、友人をつくれているといいなあと思いながら。「地域のスポーツクラブでずーっと付き合っている友人がいる」「保育園時代からの友人がいる」などの嬉しい返事が返ってきました。
●先生との懇談では、次のような点が。
*拉致に関わる記載が問題となっているのは高校の教科書のみ。神奈川県が教科書記載内容を学費補助不支給の理由としているとしても、中学生以下は関係が無い。
*JR通学定期券も高体連出場資格も必死に取り組んでようやく認められた。
*他学校との試合や連携は活発に行っている。
*各種学校と位置付けられているため、大学受験を認めている大学は、1990年代4割程度だった。その為大学入学資格検定を受ける必要があった。このような事態に対し、日弁連の是正勧告や、国連‣子どもの権利条約委員会勧告などが続き、文科省も一定の弾力的な対応を行い、現在はほぼすべての大学が受験資格を認定しているとのこと。
*経費削減を余儀なくされ、校舎の修理は保護者、Wi-Fi環境整備などは教師が行っている。
*経常費補助・学費補助がなくなる中で、人件費削減のため教員も減らさざるを得ず、2017年に24名いた教員は16名に。現在は頑張って18名まで回復。でも賃金は2割カットで遅配も生じている。校長先生も月130時間以上の授業を受け持ち、教師全員非常に忙しい。
*これまで置き去りにせざるを得なかった耐震工事など含め教育インフラ整備のために、3億円募金を目標とした神奈川ミレプロジェクトを立ち上げた。
●子どもをめぐる差別、子どもには全く関係のない事柄で、明らかな不利益を負わされてきた数々、経済的不利益にとどまらず、精神的にいくつもの場面で悔しさや怒りを覚えてきたことでしょう。
話しをしながら、申し訳ない思いや恥ずかしさを覚えます。日本政府や神奈川県は何ということをやっているのだろうと思います。差別を振りまき、学習権を阻害しかねないほど経済的困難を押し付け・・・「子どもを差別の対象にしている日本社会が心配」とある方が漏らした言葉に共感します。
でも子どもたちの顔はさわやか。授業中の教室を除かせていただきましたが、どの子からも優しい挨拶が返ってきてホッとします。
この差別解消のために私も全力を尽くしたいと思います。日本社会のためにも。(2022.5.23)