●「総合自治会館跡地等活用事業に係る報告会」に参加しました。
川崎市は中学校区に1カ所老人いこいの家を設置してきました。未設置は今井・はるひ野・長沢の3地区だけでした。
「今井中学校区に老人いこいの家をつくる会」は、20年近い取り組みを続けてきました。とりわけ総合自治会館の移転が決まってからは、町内会の賛同も得て、その跡地に「老人いこいの家」と市に重ねて要望してきました。その陳情書では、「緑豊かな広場」「その一部に老人いこいの家」をと願い、「災害時には避難所にも転用できるものに」と求めています。
ところが、市はその要望には耳を貸さないばかりか、一中学校区ごとに設置という方針を撤回したと発表。
●一方で市は、その跡地利用についてサウンディング調査を展開しました。サウンディング調査とは、対話型市場調査と言われ民間事業者から意見や提案を収集することを目的とした調査です。その調査により土地利用方針を策定し、2020年7月事業者募集を行いました。その結果、今年の2月2日に東レ建設(株)と基本協定を締結しました。事業期間は20年とされ、その後は更地で市に返却するそうです。協定書によると工事着手は4月以降、跡地等の運用開始は2022年度中とされています。
この事業者の計画概要は、以下の通り。
1.「農」シェアリングファーム(ビニールハウス)
2.「食」アウトドアダイニング棟(飲食施設・ショップ・交流スペース)
3.健康」ウエルネスリビング棟(産前産後ケア施設・保育施設・クリニック)
4.広場(約750㎡)
●参加者からは「広場が狭くてがっかりした」「緑が少なすぎる」等の声が。確かに土地利用方針の中には「緑豊かな居心地の良い空間の創出」とあるにもかかわらず、配置計画の中には5本樹木らしき配置があるのみ。事業者は「芝生があります」と誇らしげに答えていましたが、現在の自治会館跡地の緑を思い浮かべると哀しくなります。
他に、災害時の役割を問う声や、高齢者にとってはどんなメリットがあるのか、防犯は、市民が無料で使えるスペースは?等の質問が出されました。
●私は、市は土地のオーナーに止まるのか、あるいはそれ以上に公共的役割を担わせるために関わるのかを問いました。それに対しては、市の土地利用に則った使い方になっているか否かをモニタリング調査によりチェックしていくとの回答。災害対応も積極的に行うこと、使用料金などを低く設定することを要望しました。
また、「老人いこいの家」機能を望む声に対し、全ての世代が使う交流スペースを時間帯で使い分けるなどの回答がされたことから、市が、事業者の建物を賃借してでも、市民の強い要望であるいこいの家を独自に設けるよう求めました。
●シェアリングファームの「シェアリング」の意味は、「農作業を切り分け、30分単位で参加可能とすることらしいです。誰でも参加可能と謳っていますが、会員制とするそうです。
施設それぞれに対し、夢のような言葉が並べられ、事業イメージとして、 *「楽しむ子ども」から「支える大人へ」 *「居場所」から「活躍の場」へ *「よろこび」をわかちあうものへ、20年後には「誰もが健康に命を育む地域コミュニティ」へとなっています。
私は、この事業者は住民の実態や要望をどれだけ知っているのだろうかと、とても腹立たしい思いに駆られました。
また何より、なぜ事業者を通じて設計を行わなければならないのか、貴重な土地を商売の為に提供しなければならないのか、と改めて怒りを覚えました。「市場調査」といいますが、「市場」とすることなど市民は願っていません。
●市は、なぜ住民の声は無視して、事業者の言葉に踊らされるのでしょうか。市有地は市民の財産なのですから、住民の切実な声を受け止めた利用とすべきです。そのための支出を怠ってはいけません。
長年の願いが既に提出したたくさんの署名に込められています。それらに添った老人いこいの家や保育園、広い公園などを素直に造る計画ならば、住民はどんなに喜ぶことでしょうか。(2021.4.9)