君嶋ちか子

きみしま 千佳子
神奈川18区から政治を変える
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神奈川18区女性・雇用相談室長前神奈川県議会議員
活動日誌

「戦争は遺跡ではない」小池汪(おう)写真展 |君嶋ちか子|神奈川県会議員

2020年11月1日

小池汪さんの写真展「戦争暮らし」が、川崎市平和館で10月7日~30日に開かれました。

私は、7年前の市長選挙の時にお世話になって以来の短い知り合いですが、エネルギッシュであくまでも人間性を大切にする創作態度に、大きな敬意を払ってきました。

またこの写真展の開催場所を決める際に関わったこともあり、この写真展には思い入れがありました。

でも時間的制約が多い私は、結局何もお手伝いできなかったのですが。

●「日々の暮らしが戦争そのものだった」と語る小池さんは、その映像化をテーマとされました。そして開催場所にもこだわりました。

「写真家特にプロは、東京の写真美術館とかカメラメーカーが開設するギャラリーで写真展を開催するのですが、戦争体験を持つ私は平和に関する活動を行う平和館で行い、多くの方々に見ていただきたい」と小池さんは語ります。

館が主催者ではない展示は多いことではなく、調整も大変だったことと思います。

●9日に作品を見せていただきました。

小池さんの執念に圧倒されました。

中国戦線、中国戦線の馬たち、戦時下のキャンパス、特別攻撃隊、日吉海軍壕、登戸研究所、731部隊、731部隊の戦後、日本全土が戦場、学童疎開、ヒロシマ、ポツダム宣言受諾、異国の丘、満蒙開拓の悲劇、軍用地その後、横須賀基地、岩国基地、沖縄 のテーマにわけ、177点の作品が並びました。

撮影時期は、戦前から現代まで。中国・シベリア含めどれだけの地域を駆け巡った事でしょう。

特攻隊員上原良治さんが家族と揃った写真は、悲しみが鮮烈です。全員が笑っているからです。こんなにも明るく笑った家族が、息子三人全員を戦死で失います。

別の写真には、三兄弟の胸像が仏壇の前に並びますが、ご両親は、どうやって生きていることができたのだろうと思います。明るく優しく笑っていたお母さんはどのように生きだろうと。

●「中国戦線の馬たち」のコーナーに、スックと立った馬の写真があります。戦争で多くの馬が死にました。130万頭が倒れ捨てられたそうです。終戦後家にまで帰れた馬は、一頭だけと言われています。その勝山号(ランタン)も何度も銃に撃たれながら、不死鳥のように回復し、奇跡的に岩手の自分の家まで帰ってきました。

私はこの馬のことを小池さんに頂いた本「戦争にいったうま」で知ったのです。この本には、ランタンが岩手の実家で、どれ程愛情豊かに育ったか、飼い主家族との交流が温かく心地よく描かれています。やがて軍馬が足りなくなり、農耕馬にも令状が来ます。ランタンを送る道中にも涙が出てきます。

軍隊でもランタンは愛され、けがを負っても愛情深く手当されます。「お前がいるから俺は生きていけるよ」と語る当番兵が描かれています。

戦後、飼い主の伊藤家に、調教師の小池政雄さんから「カツヤマウケトラレタシ」の電報が届きます。この小池さんは、汪さんのお父さんです。軍の命令でかくまっていたそうです。それから岩手の伊藤家に連れ帰る必死の作業が続きます。

戦争を生きのびた馬も悲惨な最期を迎えたといわれる中で、まさに奇跡でした。

戦争はすべての生き物に降りかかったことを思い知らされます。

●731部隊や、登戸研究所も暗部を多少でも知っているだけに目が止まります。また、慶応大学日吉キャンパスに造られた巨大地下壕日吉壕の姿も知りました。快的な設備、司令官はワインとフランス料理を味わいながら、特攻隊に命令したと説明されています。

戦争は徹頭徹尾非人間的です。そして戦後もシベリア抑留、中国からの引き上げ、軍用地跡につくられた米軍基地、沖縄と過酷な日常は続いています。

●25日は、小池さんのフロアートークがあり、他の予定を無理やり調整して伺いました。

87歳の小池さんが、25日間の写真展、それに先立つ準備期間(私が、平和館に同行したのが2月ですから、そこから数えても9か月)にも疲れを見せず、精力的に語られました。

写真の成立には、カメラ・光・被写体・撮る人が必要ですが、撮る人がやはり決め手。どの光の時に一番よく取れるかという判断や世界観が反映されるといいます。

土門拳が「熟視の中に温度感はある」といったそうですが、小池さんは「風景に私の感情を入れる」と。

「戦争遺跡ではない、今も関与している」「戦争の怖さ伝えるには情感が必要」「若い人にどのように伝えていくか」等の言葉とともに、「基地の撮影にはパトカーが何台も集まってきた」「私服10人に囲まれた」などの緊迫感も伝えられました。どれだけの危険な場面を駆け抜けてきたことかと思います。

次にどのような仕事に取り組むかを語る小池さん、創作意欲はとどまるところを知りません。 (2020.10.25)

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