●農業・エネルギーなどで意欲的な取り組みを進めている小田原市の小山田大和さんを訪ねました。
●ソーラーシェアリングとは、農業と太陽光発電を同時に行うことです。小山田さんたちは「かなごてファーム」を設立し、広がっている耕作放棄地の再生をめざしています(「かなごて」は、「神奈川口御殿場沿線活性化異業種勉強会」の略)。
そのひとつは、耕作放棄直前のミカン畑1反5畝(約1490㎡)を借り受け、通常よりも高い位置にソーラーパネルを設置し一定の日照を確保し、その下で今年はサツマイモを栽培しています。現在は56枚のパネルで、容量は15.12kW。電力はFIT(固定価格買取制度)で売電し、年間で60万円になるそうです。
「農業+αで、営農のモチベーションを上げていきたい」と小山田さんは語ります。
「パネル設置のための神奈川県の転用許可が厳しい。農業を守るための事業なのだから、もっと促進の立場に立ってほしい」というのが県に対する要望でした。
千葉県・静岡県が100台以上設置されているのに対し、神奈川県は僅か6台とのことです。
(ソーラー・シェアリング)
●小山田さんも出資者の一人である「ほうとくソーラー市民ファンド」が造った小田原メガソーラー市民発電所も見せていただきました。550世帯分のエネルギーをつくり、湘南電力に売電しています。
●小水力発電の遺構も見せていただきました。山の所有者が1924年に、現在換算で4億円をかけ、伐採用の電力を自家発電するために造ったものです。
終戦直前に軍に接収され、その後放置され土や木に深く埋もれていたものを、小山田さんたちが数年前、遺跡のように手作業で掘り起こしたそうです。
90年以上前にこんな仕組みができていて、再び姿を現したなんて、と軽い興奮を覚えました。
●次に訪れたのが、鈴廣かまぼこ本社ビル。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)として知られています。
ZEB は、室内環境の質を維持しながら省エネを図る・再生可能エネルギーによりエネルギー自立度を高める・エネルギー消費量の収支ゼロを目指すビルを意味します。
小田原産の檜が床や天井にふんだんに使われた心地よい建物です。エネルギーとともに建物も地産地消を目指しているそうです。
屋根と屋上の太陽光パネル・断熱材が詰まった厚い壁・窓の複層ガラスは当然として、特徴の一つは井戸水を冷暖房に使用していること。夏冬通し、水温は17℃。エネルギー消費の大幅な節減が図れるそうです。
集光装置で自然光を取り込み、照明替りにもしています。これらで約60%のエネルギー削減を実現しています。
食堂以外に、休憩室がゆったりと設けられています。副社長の鈴木悌介氏は、「地域資源を十分に活用し、人が幸せになる経営・経済」といってましたっけ。
あれもこれも外注が当たり前のような昨今、パッケージなどのデザイン部門を直接社内に置いていることも印象的でした。その作業場は、社員の皆さんは退社しているにも拘らず活気が感じられました。
到着時はすでに暗く、やや急ぎ足の見学でしたが、建物も理念も素敵でした。環境や働く人を大事にしながら、経営が成り立つことをアピールし続けてください! (2017.11.18)