●水害裁判の傍聴にようやく行くことができました。この裁判の口頭弁論は木曜日午後であることが多く、木曜日は私の事務所当番の日。今回珍しく火曜日が口頭弁論。しっかり手帳の3月4日には水害訴訟を書き込んでおきました。
●2019年10月の台風19号は川崎市にも大きな浸水被害を生み出しました。
市内の家屋被害は、全壊38件、半壊941件、一部損壊167件、床上浸水1198件、床下浸水379件に及んでいます。この夜の恐怖、そしてその後の生活再建は容易ではありませんでした。建て替えに及んだ住宅も少なからずあり、事業者はさらに深刻で、機械が浸水により使えなくなり、かといって改めてローンを抱える余裕もなく廃業せざるを得ない等の深刻な例も多くありました。あの泥にまみれた数日を思い出します。
●被害の多くは、多摩川が増水しているにもかかわらず、5か所の多摩川に通じる排水樋管を閉じなかったために、多摩川の水が逆流したことによります。
台風後の市説明会に何度も参加しましたが、「排水樋管の操作は市の操作手順通りであったから誤りではなかった」とし「多摩川のゲートを閉めた場合には雨水、汚水が氾濫する可能性があったため閉めなかった」と繰り返し、誤りは認めませんでした。
それでいて、操作手順書は従来の「降雨がある場合や大雨警報が発令されている等、降雨の恐れがある場合にはゲートを全開にする」から「管内水位が付近最低地盤高に達した時点で、排水樋管ゲートを全閉とする」と、この被害の後変更されていました。
●誤りを認めない川崎市に対し、基本的な責任を怠ったことの謝罪と「再発防止」の具体的施策を求め、住民は裁判に踏み切りました。
2021年3月9日に72名の原告団を結成し、川崎市を被告とし、慰謝料共通100万円、損害賠償合計で約2億7000万円を求める水害訴訟を提起しました。
この日は第15回口頭弁論、10人の代表による本人尋問も最終となりました。
この方は、水害被害からの復旧がとても困難で、結局店舗は中原区外に移さざるを得なかった方。原告弁護団の主尋問に対し、とても落ち着いて被害の状況などを伝えました。被告側の反対尋問は殆ど内容には関わらないもので、この被害の実態からは、被告が有利になるような証言を引き出すことは無理だったのでしょうか。
次回以降は、本格的な立証に入るそうです。
●原告団長は3児の母、裁判通じて安心安全の街を次世代にバトンタッチしたいと語っています。
台風直前の夏休み、当時小学校6年生だった三男の自由研究のテーマが「山王排水樋管の設置のため団結した人々について」という話にはびっくり。直後の災害との偶然にも驚きますし、小学校6年生が取り上げるテーマとしても、凄いなと。(2025.3.4)