●神奈川18区タウンミーティングを開催しました。
「教育の格差と貧困を正す」と銘打ちましたが、私はこの問題、若者だけの問題ではなく、日本の貧困を象徴していると思っています。
講師は、大内裕和武蔵大学教授。先生は「奨学金問題対策全国会議」共同代表でもあります。
以前川崎市会議員団の学習会で衝撃を受けましたが、今回も「大学生の今」を語っていただきました。
●奨学金制度の変化
*1984年、日本育英会法全面改正で有利子枠創設。
*付帯決議「有利子貸与制度は、その(無利子制度の)補完装置とし、財政が好転した場合には廃止等を含めて検討する」
*しかしながら政府は大学の学費を引き上げる一方で、1999年に財政投融資と財政投融資機関債で運用する有利子貸与制度をつくり、その後の10年間で約10倍に拡大させた。2007年度以降は民間資金を導入。
《その結果》
1998年度 無利子奨学金39万人 有利子奨学金11万人 計50万人
2012年度 無利子奨学金38万人 有利子奨学金96万人 計134万人
《さらに》
*第一種(無利子)奨学金、教育職就業返還免除制度 → 1998年に廃止
*奨学金返還免除職(大学研究職)→ 2004年3月に廃止
《奨学金返済》
*奨学金借入金 平均約310万円
*年利10%の延滞金
*利息収入と延滞金は、銀行と債権回収専門会社へ(「金融事業」かつ「貧困ビジネス」としての奨学金)
●大学学費と経済的困難
《1969年=初年度納付金》
国立大学 1万6000円(入学金4000円 授業料1万2000円)
私立大学 平均22万1874円(授業料8万4048円)
↓
《2018年=初年度納付金》
国立大学 81万7800円(入学金28万2000円 授業料53万5800円)
私立大学 平均133万6033円
*世帯年収(中央値)1998年544万円 → 2016年428万
*奨学金利用者の割合 1998年23.9% → 2012年52.5% → 2018年47.5%
*仕送り額
10万円以上 1995年62.4% → 2019年27.9%
5万円未満 1995年7.3% → 2019年23.4%
●奨学金制度改善の運動
*「奨学金問題対策全国会議」結成 (2013年)
*2014年度予算
延滞金賦課率 10% → 5%(2020年4月3%)
返還猶予期限 5年 → 10年
無利子奨学金の増加42万人
*2018年4月 給付型奨学金の正式導入(住民税非課税世帯、1学年2万人を対象)
*2019年5月 「大学等における修学の支援に関する法律」成立
対象を「真に支援が必要な低所得世帯の者」に限定
●「高等教育費の漸進的無償化と負担軽減に向けての政策提言」
1 大学・短大・専門学校の授業料を現在の半額とする。
2 大学等就業支援法の対象者を中間所得層まで拡大する。
3 貸与型奨学金について「有利子から無利子へ」を加速化する。
4 給付型奨学金を拡充し、「貸与から給付へ」を加速化する。
5 貸与型奨学金制度の改善(人的保障の廃止・延滞金の廃止・猶予期限の撤廃・所得連動返還型奨学金の改善・返済者の負担軽減)
6 職業教育の充実(国公立の職業訓練校の拡充)
7 人口50万~自治体に職業訓練と進学のニーズを満たすコミュニティカレッジを設置。
●これらの講演の後、大内先生と君嶋の対談。
私は、以下の点について考え方を述べながら、大内先生の見解を伺いました。
1 日本の貧困を象徴しているかのような学生の実態、教育費が高いことが少子化の第一の要因にもなるなど、全世代にわたる問題となっている。
なぜこれほどまでに、未来を担う若者を辛い状況に立たせるのか、その政治的背景にもう少し立ち入っていただきたい。
大内先生コメント 何と言っても大本は企業団体献金でしょ。奨学金制度の変遷は金融機関の要請に応えてきた。
2 やはり財界の要請に応え、労働法制の規制緩和を重ね、日本は実質賃金が30年間上がらない国になっている。この間に生まれ育った現在の学生は、現在の日本をどのようにとらえているのか、次につながる力を見出すことはできるのか。
大内先生コメント 現在の若者は成長を経験していない。味方がいるということを実感してもらうことが第一歩。
3 国立大学の独法化により、十分な運営費が交付されず、研究にも支障が生じ、論文数が激減している。学生だけではなく大学に対する攻撃も強まっている。私学も含めた状況について伺いたい。
大内先生コメント 運営交付金や補助金を減らし続けてきたことがすべて。大学はそのために授業料をあげるしか術がない。私学は存亡の危機。
4 共産党の高等教育政策は、ほぼ大内先生が掲げる政策と一致しているが、特に強調すべき点やアドバイス等があれば。
大内先生コメント インチキ無償化との差別化が必要。維新の動きにも注意すべき。維新は教育の無償化を掲げるが、奨学金問題では自己責任論そのもの。
君嶋私見> 経済的格差に寄らず人間が学ぶ権利や人間が育つ場を保障するという点を踏まえているかどうかの違いではないか。
●フロア発言を経て、最後に君嶋から若干のまとめとお礼。
現在の政治は、日本の全世代・全分野を追い詰めています。
今日の若者の困難は、一つの象徴ですが、若者がどのように生きる力を獲得していくかは、多くの人が安心して暮らしていける社会を志向できるか否かの分かれ目だと思います。全世代にわたる社会を形作る基礎であり、とても重要なポイント。
今日皆さんと共に学んだ力を大いに発揮し、若者巡る状況の改善を進めたいと思います。そのためにも政権を変えることに全力を尽くします。共に頑張りましょう。ありがとうございました。
●約140人の参加を頂き、アンケートも多数寄せられ、日本の状況がよく解ったという趣旨の感想が多くありました。(2024.3.20)