●日本共産党川崎市議団主催の学習会に参加。
テーマは「学校給食無償化の実現に向けて」。講師は千葉工業大学の福島尚子准教授。専門は教育行政学・教育法学。
この方の著書に「隠れ教育費」―集金が止まらないというのがあります。着想に惹かれました。モットーは「子どもを排除しない学校」「公教育の無償性の実現」「教職員の専門職性の確立」と興味深いものばかり。
●【文科省「子どもの学習費調査」2021年度】
給食費抜きで、公立小6万円、公立中13万円を保護者は負担
中学生の場合:
*通学費(交通費・制服等)39,516円
*図書・学用品費 32,368円
*教科外活動費(部活費・林間学校等)24,172円
*学校納付金(PTA会費・冷暖房費・学級費・生徒会費)14,538円
*修学旅行費 15,824円
●【学校給食費の平均月額】全国
*小学校 4477円×11カ月=49,247円
*中学校 5121円×11カ月=56,331円
●【公教育の無償性原則と教育の無償化政策】
*公教育の無償性原則(日本国憲法26条2項後段「義務教育はこれを無償とする」)=家族の状況に左右されることなく、全ての子どもが義務教育を受けるための経済的保障
*公教育の無償性の範囲の垂直的拡大(対象の学校種を拡大=高校や幼稚園まで)子どもの権利条約28条b項が拠り所になるか
*公教育無償性原則の水平的拡大(憲法26条の無償の範囲拡大)
*「無償」とは
・現金給付=教育というサービスにかかわる費用を家庭にわたす
・現物給付=教育というサービスやそれにかかわるものを直接子どもたちに届ける
・選択的現物給付=経済的状況や子供の能力などの基準により選別された一部の家庭に給付(選別のための事務の発生や受給漏れの可能性)
・普遍的現物給付=すべての子どもを持つ家庭に対して給付
●【就学援助制度の限界】
*認定基準の自治体間格差
*申請主義(希望者のみが提出する申請主義がほとんど)
*大人に知られていない「内容まで知っている」大人6.0%、子ども20.5%
「聞いたことがない」大人27.6%、こども16.2%
(3万人アンケートから見る子どもの貧困に関する意識データ集)
*制度利用へのうしろめたさ
「できるなら利用したくない」62%
「どんなに苦しくても申請したくない」22%
(230201困窮子育て家庭の生活実態調査)
●【教育無償化政策の飴と鞭】
*教科書の無償給付と抱き合わせで教科書選択権の吸い上げ
*給付型奨学金制度を適用する大学の条件を厳しく指定
*特定の思想を強く反映した副教材、単一の教材会社の副教材。必要性の少ない教材などが無償配布され、かつ使用状況にかかわる指導が入る
▲給食無償化と引き換えに、質の低下や完食指導加速化などを招かないか
●【貧困状況が表出する学校の給食】~給食がない場合
*お弁当を持ってこれない子ども⇒教室を出てやり過ごす
*栄養が偏ったお弁当の家庭⇒お弁当を隠して食べる
*ダブルワーク・トリプルワークの合間にお弁当を準備する保護者
*就学援助制度で認定を受けても、給食費が補助されない
●【貧困状況が表出する学校の給食】~給食がある場合
*栄養バランス整っている・おいしい・温かい・調理負担がない
*就学援助制度で、給食費分の補助得られる
*教師・校長などの肩代わりや督促の負担
*未納が発生すれば、保護者間での不公平感や給食の質の低下を招いている
▲公会計化すれば、殆どの問題は解決
●【公教育の無償性に反する学校給食法】
*日本国憲法26条「義務教育はこれを無償とする」
*学校給食法11条「学校給食に要する経費・・・保護者の負担とする」
▲学校給食法11条は学校給食費公費負担とすることを妨げてはいない
▲給食費無償化に踏み出す自治体が増え続けている
▲自治体間格差を生み出さないためにも、国も負担する全国的な制度を
●【給食費無償化への戦略】
*学校給食法11条は学校給食費公費負担とすることを妨げてはいない
*公会計化を導入し、必要な金額を共有
*学校教育法5条「設置者負担原則」と憲法26条「義務教育の無償化」を根拠とし国庫負担や地方交付税措置を求める決議を文科省・財務省・総務省へ
●【子どもが排除されない学校を目指して】
*朝から夕方まで過ごす学校で給食を提供するのは当たり前、まさにトイレや保健室と同様に生存権の保障
*すべての子どもたちが当たり前の学校生活を安心して送ることのできる環境を (2023.2.21)