●羽田新飛行ルートの殿町現地調査に参加しました。
新ルートは、オリンピック開催をにらみながら外国人旅行客を4千万人に増やすという国策の下、増便の為に強行され2020年3月から開始されています。
私は、2018年12月の代表質問で「県民の命を守るという観点から、危険な羽田新飛行ルートの中止を国に求めよ」と知事に質しています。
知事は「経済効果が認められるから中止は求めない」と答え、国も計画を強行しました。
●つい先ごろ東京新聞に、新ルートの危険性を指摘する記事が掲載されていました。
パイロットによる昨年度の事例報告では、都心ルート運用時の横風や急な降下角度について、危険性を感じたという声が相次いでいるという記事です。15件の報告は異例ですが、さらに実際には多くの人が同様に感じているだろうとの指摘も。
私はアーやっぱり、と思いながら記事を読みました。南西の風が多い羽田空港は、従来の東京湾からの着陸時には安全な向かい風になるところ、都心上空から着陸する新ルートでは横風になります。パイロットの「不安定になり、あまり経験したことが無い揺れ」との声が報じられています。
降下角度も従来は3.0度、新ルートでは3.45度が求められるとも報じられています。これについては機長経験者から直接お話を伺ったことがあります。降下時は谷底に落ちていく感覚、降下角度のわずかな差でも危険度が格段に増すとのこと。
このコースでは、着陸のために高度を下げるゾーンが住宅地上空に当たるのですが、騒音があまりにひどく通常よりも高度を上げざるを得ない、その結果角度が急になっているのです。どれ程無理なコースかという事です。
●着陸の危険性はこのように操縦面からも多く指摘されていますが、新コースでは離陸時に川崎区の住宅地と石油コンビナートの上空を飛びます。
離着陸時の低空飛行による騒音、部品落下、最悪の場合は墜落など、懸念は限りなく、最も事故率が高い離着陸時が、住宅密集地やコンビナート上空は避けなければならないゆえんです。
バードストライクなどの外的要因もあります。鳥が機首にぶつかったりエンジン部分に吸い込まれると特に危険です。多摩川は「生態系保持空間」に指定され鳥も多く生息しており、その可能性は高い地域です。
●これらの危険に加えて、石油化学コンビナートの危険性も。
石油化学コンビナートで長く仕事に従事してきた竹内康雄さんから説明がありました。
コンビナートには大量の危険物と毒性物質が存在し、パイプラインで企業内・企業間もつながっています。高圧の可燃性ガスや毒性ガスがパイプを流れ、その原料である原油やナフサ、LNGなども大量に存在しています。
粗製ガソリンや原油は大容量に火が着いたら、現在の消防力・化学力では燃え尽きるまで消すことができないという恐ろしい話も。
もし、部品があるいは機体が落ちてきたら、コンビナート周辺も巻き込み一面火の海、大量の油が海にも流出。かつての海上火災では、28日間燃え続けた例があります。
だからこそ、世界的にもコンビナートの上空を離着陸するような空港は、一つもありません。
●この日、説明や報告は度々低空で飛ぶエンジン音にかき消されました。2~3分おきに羽田空港を飛び立った旅客機が多摩川を渡り、住宅地を経てコンビナート上空へと移動してゆきます。
コロナ禍の下、約70~80%の減便となっているにもかかわらず、1日約30便が川崎の上空を飛びます。
国民の命を危険にさらしながら、海外旅行客を増やそうとする発想はもうやめなければなりません。(2021.4.27)