●ちょっと空いた時間、川崎平和館で行われている川崎大空襲記録展へ。
空襲に関する資料とともに、登戸研究所に関する資料、当時の市民生活に関する資料などが展示されていました。
私には戦時下の暮らしが興味深く。撮影禁止が残念!皆さんにお見せしたい写真の連続でした。(標語の「せう」や「やう」は間違いではありませんので念のため)
●ぎょっとしたのは隣組(となりぐみ)回報で回される<犬の献納運動>。
「勝つために犬の特別攻撃隊を作って、敵に体当たりさせて立派な忠犬にしてやりませう」と呼びかけ「なにがなんでも、皆さんの犬をお国へ献納してください」と。
ところが解説文には「兵士用の防寒具になる犬皮を確保するため」と書かれていました。実際、特攻隊として戦わせたのか否かはわかりませんが、防寒具にはされていたのでしょう。「立派な忠犬」が悲しく響きます。
●<決戦衣服はこれだ>の写真では、「冠婚葬祭は平常着で」と書かれ、「訪問着を更生した乙型標準服の花嫁、乙型国民服の花婿」などの解説。
「新調しないこと、これが決戦下の衣生活で一番大切なことです」「お母さんの着物は共同で着ませう」「つぎの一針々々に縫い込まれた決意の尊さ」と続きます。
私は質素な暮らしを好み、補修をしながら使うことも好きですが、「つぎ」が決意とか尊いと言われ強制されるとね…ついでながら「つぎ」って言葉若い人に通じるかなと余計な心配しながら。
注:つぎ=破れた衣類を補修すること。
●<国民精神総動員 家庭実践心得>のポスターらしきものには、「辛いと思ったら戦線将士の労苦を思い起こせ」「非常時の家庭には一人の怠け者を許さず」「勤労奉仕は嬉しい義務、応召家族は感謝で受ける」「部落の共同は大日本の礎である」と続き、「一銭の金もつんで組合に預ければ郷土を守り、国土を護る」と書いた脇には、子どもが包みを差し出す絵が。
なるほど、別のポスターでも、子どもにも国債を買うように呼び掛けていましたね。
●<これからの結婚はこのやうに>の解説文には、「新婚旅行には行かないなどの節約を行い浮いた経費で国債購入が呼びかけられていた」と書かれていました。
振袖をやめて留めそでで立つ女性の横には「21歳までに」、モーニングをやめて国民服の男性の脇には「25歳までに」と書かれているのにも驚きました。
「結婚十訓」の中には、「心身共に頑健な人を選びませう」「健康証明書を交換しませう」「なるべく早く結婚しませう」「産めよ育てよ国のため」などが。
1940年に制定された優生保護法の下、「優生婚姻」が奨励され人種差別や障がい者差別を助長したと解説されています。
読み取りが明瞭にはできなかったのですが「悪い思想のない人を選びませう」と思われる文句もありました。差別や人権侵害のオンパレードです。結婚がこのように縛られ、年齢まで指定される社会がどれほど息苦しいものか。
●もっとじっくり見たかったのですが、時間切れ。いつもながら、戦争がいかに暮らしを歪めるか、いかに異常を強いるかを痛感します。これは昔話ではありません。ロシアの報道・言論統制なども頭に浮かびます。
「川崎大空襲記録展」は、広く市民に戦争の悲惨を伝えることを目的として、川崎大空襲の日(4月15日・平和館開設の日)を含む2カ月ほど、毎年行われています。今年は3月10日~5月15日。皆さんも是非ご覧ください。(2024.4.23)