●前回の報告、マイナ保険証をめぐる現在の状況に続き、知念氏は保険証廃止の先どんな社会が待ち受けるかについてもお話しされました。
本格化する政府のデジタル化政策
*デジタル政策の司令塔「デジタル庁」の創設。
*各種資格証等をマイナンバーカードに一元化(医療・就労・資格・公共等)。
*マイナンバーカードを取得・携帯・利用しないと生活が困難なシステムに変え、事実上の強制。
*DXとは:デジタルトランスフォーメーション(Degital Transformation)の略称。デジタル技術によって、ビジネス・社会・生活のスタイル等を変えること。
*医療DXとは:保健・医療・介護の各段階において発生する情報やデータを、業務やシステムデータ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。
医療DXの狙い
*パーソナル・ヘルス・レコード(PHR):患者国民が電子化された自分の医療情報をオンラインで閲覧・管理する仕組み。
*給付と負担のコントロールの導入「社会保障個人会計」(個人が負担する税・保険料の範囲内に給付を抑える)の導入。
*マイナンバーカードの取得・利用の強制とともにマイナポータルの日常的なチェックを強制する社会への変容→「健康自己責任社会」の構築。
*同時にヘルスケア企業に利用できる形にして、医療・健康サービス開発を進める(民間企業の儲けの種)。
マイナカード取得を義務化しない理由
被った損害について、デジタル庁の故意または重過失によるものである場合を除き、デジタル庁は責任を負わないものとする。
医療DX、デジタル社会が到来したら
*公的医療・社会保障の給付抑制。
*医療の市場化・産業化(PHRの民間サービス化、民間保険の拡大=医療保険の給付範囲から漏れた部分に対し)。
*カードがなければ不便・不利益な社会構造に。
*国家・権力による「監視」「行動統制「個人の選別」。
「デジタル化=個人情報の扱い方」という認識を
*デジタル技術を否定する必要はない。
*一方でデジタルの危険性は個人情報の漏洩・流出に伴う被害(なりすまし・不正利用・データ改ざん等)。
*利便性の享受とプライバシー保護のバランスが重要。
デジタル化への論調に対して
*デジタル技術は目的実現のための手段。デジタル化は目的ではない。
*デジタル化による利便性とプライバシー保護のバランスが大切。
*デジタル化によって得られる利便性と失う能力のバランスが大切。
*デジタル技術は電気がなければ稼働しない。
*デジタル化に対応できない人への配慮が必要。
*「開始当初のミス」として個人情報保護の軽視の傾向。
医療情報とは
*生命・身体・健康に関する個人情報であり、機微性が高い。
*医療者の守秘義務は重く、職業倫理が問われる(ジュネーブ宣言1948年・開業医宣言1989年)。
*医療情報が十分に保護されたうえで得られるメリットやリターンが上回るのであればデジタル化は好ましい。しかしながら、保険証の廃止はメリットよりデメリットが上回ることが明白。
強引なデジタル社会推進への対抗
1 健康保険証の廃止撤回、マイナカード取得の強制No
2 国内外で多発している問題の検証と対策を先に
3 デジタルとアナログ療法の選択肢を残した設計に
4 前のめりな政府に最低限のルールを導入させる
5 自分のマイナンバー情報に、いつ、だれが、何の目的でアクセスしたかの履歴を本人が把握できる設定にする
6 デジタル化は高齢者に合わせたシンプルな設計とする
7 省令だけの利用拡大はNG
8 マイナカード取得率で自治体への交付税に差をつけることはやめよ
9 リスクも合わせて情報公開。担当大臣が懸念や反対意見をブロックするのは禁止
10 憲法13条に内包する「自己情報コントロール権」を国・司法に認めさせる
●健康保険証問題にとどまらないデジタル社会への警告や提言は大いに頷けました。でもこのまま推移すると大変な社会になります。(趣旨を損ねない範囲で簡略化しています。悪しからず)
この日、「なくすな保険証!神奈川連絡会」が結成されました。(2023.8.31-2)