●「なくすな保険証!神奈川県連絡会」の結成めざし、準備会が開催されました。
プログラムの一つ学習会の講師は、神奈川県保険医協会事務局の知念哲さん。基本的な事柄をすっきりと整理してくれました。
●その内容をおさらい。
健康保険証の役割
日本の医療保険制度は「国民皆保険」=いつでもどこでも、だれもが、少ない費用(自己負担分)で高度な医療を受けられるというのが優れた点です。
健康保険証は、医療保険制度に加入していることを示すための証明書です。
ところが、2022年10.13、突然河野太郎デジタル相は「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」とし、今年3.7には保険証廃止法案が国会に提出され、6.2には成立しました。
マイナ保険証とは 「マイナンバーカードの保険証利用=マイナンバーカードを使った「オンライン資格確認」
マイナ保険証の手順
①カードリーダーにマイナンバーカードを読み取らせる。
②本人確認方法として顔認証を選択。
③カードリーダーのカメラに顔を映し本人確認を行う。
④医師等が他院の医療情報を閲覧することの可否を選択。
⑤資格確認が完了。
⑥カードを取り出し終了。
健康保険証にはないマイナ保険証への追加機能
医療情報の提供や閲覧
マイナンバーカードなぜ普及しないか
*マイナンバーカードの取得率2016年1月~2020年4月で16.0%。
2022.5月時点で医療機関への導入率は19.0%(診療所は13%)
*医療機関で普及が進まなかったのはなぜ?
・メリットを感じない
・職員の負担が増加
・紛失等の際のリスクの増大
・医療情報の漏洩リスクの増大
*国民に普及が進まない理由
・メリットが感じられない
・今の保険証で十分
普及のために政府は
*医療機関に対し
・システム導入の初期費用への補助金
・カードリーダー(約10万円)を無償配布
・指定医療機関の指定取り消し(事実上の営業停止処分
*国民に対し
・マイナポイントの支給(カード取得で5000円、保険証としての利用申請で7500円、公金受取口座とマイナンバーの紐づけで7500円、計2万円)
・保険証の廃止=事実上のカード強制
その結果
*保健医療機関 ・薬局全体で準備完了施設数:20万1,878施設(88.0%)
*保有枚数:8,903万9,559枚(約71%) 2023.7.31時点
保険証廃止の問題点
*皆保険制度の根幹を揺るがす(強制加入の皆保険を任意取得・本人申請にしてしまう)
*無保険扱いが頻発の恐れ(更新漏れ・ネット回線のトラブル等)
*医療情報の流出・漏洩(資格確認システムと医療機関の医事システムとの接続はリスク大)
*マイナ保険証の方が負担減となる懲罰的ルール
システムの脆弱性 5月中旬
*マイナ保険証、他人の情報紐づけ7,300件超
*コンビニ交付で他人の証明書発行
*抗菌受取口座に別人のマイナンバー紐づけ 等々
トラブル続出 法案強行成立後も
*マイナポイント他人に付与
*マイナカード誤交付、各地で
*マイナポータルで他人の年金情報が閲覧可能に
*マイナ保険証の負担誤登録、17都道府県57件以上
*マイナ保険証の未登録、協会けんぽで約77万件
医療現場で多発するトラブル
*医療保険資格が「無効・該当なし」と表示される(一旦10割負担全国で1300件)
*データ上で表示される負担割合と健康保険証の負担割合が異なる
*窓口業務の負担増加
厚労省の対応策(ギャグかと思うほどひどい by君嶋)
*健康保険証を提示するよう指示
*自分でマイナポータルにアクセスし情報を確認
*負担割合が確認できない場合、年齢・職業・通院記録などから負担割合を予測
結 論
*マイナ保険証は、医療現場、患者・住民にとって”迷惑の種”
*運用できるレベルに達していない
*健康保険証であれば起こりえない問題ばかり
保険証存続が世論に
*報道は見直し一色(産経新聞・読売新聞も)
*自治体からも見直し・保険証存続の声(神奈川県、国に要望全33市町村と国保組合など。その他多くの自治体から国への意見書)
*自主返納が急増
*内閣支持率が急落(産経調査で保険証廃止に対し「延期+廃止」74.6%、「理解」は23.4%)
*保険証廃止の撤回を求める取り組み続々(国会前行動・国会議員要請・街頭宣伝・「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」等)
●この後、知念さんのお話はデジタル化が招く社会に及びますが、ここまでもかなり長くなったので、以降は次回に回します。(2023.8.31)