▲教育現場の過酷な実態を何とかしなければとの思いは募るばかり。そんな思いが、不登校のお子さんが増えているという実態と結びつき、共産党神奈川県委員会の主催で教育問題のシンポジウムを開催することができました。「学校どうしちゃったの?シンポジウム」と称し、1月22日に。
ポイントとしては、「教師の過酷な働き方と教員の欠員状態」と「子どもにとってつらい学校」。
この内容に沿って、パネラーは教員、不登校のお子さん抱えるお母さん、教育行政という視点で県会議員の私という具合。
▲【最初に共産党中央委員会文教委員会責任者藤森毅氏の報告】
●不登校が今は誰にでも起こり得る。社会のゆがみと捉えるべき。
●行きたい学校、安心できる場にすること。
●不登校は2012年以降の9年間で一気に増加。2012年と2020年を比較すると中学校では2倍、小学校では約4倍に。
教育基本法改悪、全国学力テスト、「規律」重視(ゼロトレランスにつながる)などの影響ではないか。
(第一次安倍政権2006年9月~2007年9月、第二次安倍政権2012年12月~2020年9月)
●教員不足は労働条件悪化の結果。
●労働条件悪化の要因は、①教員定数が少なすぎる ②業務の肥大化 ③定額働かせ放題招く給特法。これらを取り除くことが必要。
●教育予算の国際比較(教育予算の対GDP比)、日本は37か国中36位の2.8%。教育環境を整えるのは政治の責任。
▲【パネラーOさん(教員)の報告】
●20年ほど前から川崎市でも定数内の正規採用を減らし、臨時任用としている。結果未配置が生じている。
一人の教師が、大型テレビを用い2クラスを同時進行授業、中学で美術の授業が一カ月できなかったなどの例が生じている。
●過酷な労働条件の下、若い教師が辞めている。定年退職122人、定年前退職 135人のうち7割(89人)が20~30代。精神疾患も多い。
●授業時数が多い・観点別評価・管理強化などが教師の負担を増加させている。
▲【パネラーTさん(保護者)の報告】
●娘と息子が不登校を経験。1000人を超えるマンモス校。娘入学直後から行き渋り、頭痛腹痛を訴え保健室登校。
●学校へ行くのが当たり前という常識の中で親は孤独。児童主任支援の存在は心強い。
●養護の先生の忙しさを見て娘は「保健室はケガや病気の子が来るところだから私はいられない」と保健室にも行けなくなる。
●フリースクールなども考えたが合うところがなく、相談室はありがたかった。教室の4分の1程度の広さは落ち着けた。先生が変わるのが残念。
●息子も学校に行けなくなる。
●音がうるさくて先生の声が聞こえない、休み時間が短くて疲れる、校庭で自由に遊べないなどの訴えあり。
●教員も教室も不足。42人学級はきつい。長期休職の先生が多い。
●先生が声をかけてくれたことに対し「こんなに先生と話したのは初めて」と、息子がとても喜んでいた。
●個別支援級など、音や環境の変化に敏感で繊細なHSC(5人に一人に表れる神経系の特性)への配慮は、他の子どもにとっても居易い場所。
▲【パネラー君嶋の報告】(長くなりますが、お付き合い下さい)
1 教員不足の状況(全国)
文科省(2021年4月公立各校を対象)調査
●4月時点2558人の不足
小学校1218名(学校数937校・4.9%)
中学校868名(学校数649校・7.0%)
高等学校217名(学校数169校・4.8%)
特別支援学校255名(142校・13.1%)
●要因(文科省分析)
①必要な教員数が増加(特別支援学級数の増加)
⓶講師なり手の減少(受験者数の減少・採用数の増加 ⇒ 登録講師の減少)
③産休・育休をとる教員が増加(20~30代教員の増加)
④休職・退職教員の増加(精神疾患2000年代増加、5000人台で高止まり後2021年度5897人・前年度より694人増加)
2 教員不足、神奈川県の状況は
(政令市を除く県内公立小・中・高校)
●条例定数 2019年度28,369名 ➡ 2022年度28,188名(▲181)
●臨時任用数 2019年5月1日2,171名 ➡ 2022年5月1日2,123名(▲48)
●教員採用数(正規) 2019年度1,089名 ➡ 2022年度1,123名(+34)
●欠員数(未配置) 2021年5月1日85名 ➡ 2022年5月1日145名(+60)
●病気休職者数 2018年度231名 ➡ 2021年度256名(+25)
●うち精神疾患 2018年度152名 ➡ 2021年度184名(+32)
3 今子どもたちは
(1)小中学生の不登校過去最多
全国で24万4940人(2021年度文科省調査)
(2)神奈川県の調査結果(公立学校)
●暴力行為 2020年度8,032件 ➡ 2021年度8,435件(+403)
●いじめ 2020年度23,061件 ➡ 2021年度30,835件(+7774)
●小中不登校者数 2020年度14,267人 ➡ 2021年度16,656人(+2389)
●高等学校不登校者数 2020年度2,417人 ➡ 2021年度2,903人(+486)
(3)暴力行為に対する要因・背景・対応等(県教委分析)
①不安やストレスをうまく言葉に表せない。
⓶家族関係などの環境
③授業を理解できないなど学校にかかる要因
★対応として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用、児相や警察との連携。(学校にかかる要因への対応なし)
★コミュニケーションスキルや感情をコントロールできるスキルを身に着けられるよう指導、起こった行動に対する毅然とした対応。(というレベルにとどまっている)
(4)いじめに対する対応(県教委)
●いじめ防止対策等の組織の招集
●教職員間の共通理解を図る
●教育相談体制の充実
(5)不登校に対する対応(県教委)
●スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携。相談・医療・福祉等の関係機関につなげる
●不登校の生徒に教育の機会を確保するうえで、学校以外の多様な学びの場につないでいく(教育支援センター・フリースクールなど)
●魅力ある学校づくり
▲参加者からは多くの発言がありましたが、ここでは一件だけ紹介します。
【Yさん】
●最初は登校させるためにエネルギーを使い切った。息子の「俺も学校行こうと思っているけど体が動かない」との言葉を聞いて、無理に行かせることはやめた。今は週2~3回登校。忙しすぎる生活なので、バランスを崩すのは当然。
●個人や家庭の問題だけではなく、社会や政治の仕組みに原因があるのでは。
学校がもっと楽しい場所であってほしい。学校に行っている子がいい子という感覚もなくなってほしい。一人一人の学びが大切にされ、楽しい日々が過ごせるようにする責任が大人にはある。
●学校に行けない子どもの学びについてフォローは十分でない。
●色んな悩みが出てくる高学年・中学校・高校こそ少人数学級が必要。
▲多くの方から出た希望は「少人数学級を実現してほしい」、この言葉とともにYさんの要望・指摘は今後に十分生かされるべきだと思います。
また、このような場が待たれていたことも多く語られました。
教師・生徒ともにズシリとした課題を抱えながら、引き続き。(2023.1.22)