●「女性活躍推進議員連盟」の主催で、「『困難な問題を抱える女性支援法』について」をテーマとした講演がありました。
講師は戒能民江(かいのう たみえ)さん。ジェンダー法学会理事長、「女性支援新法制定を促進する会」会長等々(まだいっぱいあります)を歴任。現在は法制審議会家族法制部会会員、女性と人権全国ネットワーク共同代表など(これもいっぱいあります)。
以下、講演内容からいくつか抜粋。
●2022年5月19日「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下、女性支援新法)が衆議院本会議において全会一致で成立。超党派による議員立法。
1 婦人保護事業の限界と脱売春防止法
*1956年の売春防止法制定以来ほとんど改正なし
*売春防止法は「要保護女子」の「保護更生」であり、支援を必要とする女性のための「支援」ではない
施設での集団生活による「指導」中心で、一時保護以降の自立支援の法的根拠がない
*「保護更生」は、性道徳・性風俗秩序の維持、環境浄化を目的とし、人権保障・権利擁護が目的ではない
2 女性支援新法のポイント
*新たな女性支援の枠組みを構築、人権を保障する「女性福祉」へ
*当事者の意思の尊重と心身の健康の回復
*公的責任―国の基本方針・都道府県基本計画の義務化
*民間団体との支援の共同
*支援の独自性―必ずしも具体的な問題の解決を目的とはせず、人権保障や生活支援中心の支援やアフターフォロー
3 女性支援法の重要規定
*定義(2条 困難な問題を抱える女性-「性的被害、家庭の状況、地域社会との関係等の事情で、日常生活・社会生活で困難な問題を抱える女性・その恐れある女性」)
*女性相談支援センター(9条 困難を抱える女性の立場に立って、意向を踏まえた支援)
*女性相談支援員(11条 市区町への配置は「努力義務」)
*女性自立支援施設(12条 心身の健康回復、自立促進のための生活支援、同行した子供の学習・生活支援)
*支援調整会議(15条 都道府県・市区町村が主体)
*教育啓発(16条 自己がかけがえのない個人であることの意識の涵養(かんよう))
4 施行までの課題
*施行―2024年4月1日
*施行後三年をめどに見直し
*施行前に基本方針策定可
*都道府県・市区町の大きな役割
*民間団体と行政、それぞれのメリットを生かした協同の推進
●この法制定にあたって、神奈川県議会も役割を果たしていました。2015年7月13日に全会一致で「売春防止法の抜本的な改正または新たな法整備を求める意見書」を可決しています。
「『女性相談所』や『女性保護施設』『女性相談員』が女性を人権侵害から守り、自立支援機能を十分に果たせるものとなるよう、財政措置を講じるとともに、職員の配置基準を改めること」を掲げています。
この法を生かせる神奈川県の十分な財政措置と体制づくりに取り組まなければ。(202.7.21)