●「川崎の緑地と樹木を守ろう」と呼びかける集会が「川崎民主市政をつくる中原区の会」主催で。
第一部は「みどりの日傘の持つ大きな可能性」と題する藤井英二郎千葉大学名誉教授の講演。
ヒートアイランド緩和には、舗装面の樹冠被覆・地被植物・土壌面・水面確保が重要。
樹冠被覆がこの日の大きなテーマ。
●樹冠被覆率とは、土地の面積に対する「緑の木陰・緑のトンネル」の面積の割合。単なる緑ではなく日射を遮るかどうかが決め手。(屋上緑化では地下水も本物の土壌もないことが問題。落ち葉を分解しない)
日射によって路面温度は50℃を超えるが、樹冠被覆によって路面温度は20℃下がる。
●いま世界では、ヒートアイランド対策として被覆率を増すための流れが
▲リヨン:樹木憲章をつくり、樹木被覆率27%を30%にまで増やす(30%に達すると暑さ起因の死亡者数を約40%減らせる)
▲アメリカ:樹冠被覆率の公開
具体的には
▲リヨン:車線を減らして植樹帯をつくり、1990年以降枝を伸ばす剪定へと切り替え
▲ソウル:4mから上の枝は大きく伸ばす
▲メルボルン:樹冠によるコンクリート建造物の被覆
●日本の場合は抑制剪定や強剪定が主流、その背景は
▲管理費削減により数年に一度の剪定で維持しようとする
▲一般競争入札による低廉な業者の手荒な剪定
▲苦情処理としての剪定(落葉の始末、見通しが悪い等)
▲街路樹剪定の目的が、庭木と同様のコンパクトにまとめることとされている
●「川崎市街路樹管理計画」
現状の課題
・強剪定による樹勢悪化「大径木化・老木化による倒木」
・根上がりによる通行障害
・落枝や幹枝のはみ出しによる車両との接触
・枝葉による見通しの悪化、信号・道路標識・街路灯の遮蔽
基本方針(「川崎市街路樹管理計画実施プログラム」)
・歩道の有効幅員2mが確保できない場合は(街路樹を)撤去
・更新は、機能を考慮し樹種を選定
●落ち葉への対応
▲ナント「落ち葉はみんなのもの。落ち葉を理由に剪定することはない」
▲リヨン「落ち葉への理解、学校やアソシエーションで意識改革を進めている」
▲仙台市・名古屋市「落ち葉問題で剪定はしない」
▲田園調布「落ち葉掃除は住民・区などが協力」
▲中野区「落葉受忍」(中野区みどりの保護と育成条例)
負の連鎖=緑陰不足・景観悪化→ 樹勢悪化→ 腐朽菌侵入→ 倒伏危険性増大
●日本の街路樹管理の推移
*~1970年頃、直営管理
*1970年~技術職員+民間委託
・当初は発注者が剪定方法を指示
・技術職員の不補充等により専門性が保てなくなる→事務的発注
・街路樹担当者が苦情に対して専門性踏まえた対応ができない→ 過剰な安全志向による伐採等
●「東京都街路樹等維持標準仕様書」を例にして藤井氏の見直し提案
▲「頂部の樹勢が強い樹木の生育特性を踏まえ、上方を強く下方を弱く剪定すること」→「建築限界をクリアーするため、下枝を早めに切除し、樹冠状部の枝は可能な限り伸ばす」
▲冬期:樹形の骨格作り
夏期:強風の風圧低減などやむを得ず行うものに限定
▲支障枝:必要以上に切断することは一層の支障枝を発生させる
▲また根元近くの掘削が根をズタズタにしている。
●東京は、パリやニューヨークに比べて気温上昇が激しくなっています。関東大震災後のコンクリート建造物増加の影響もありますが、街路樹のありようも影響しています。
リヨンやナントはもちろんのこと、ローマ・ハンブルグ・ロンドン…とたっぷりと枝を広げた街路樹が映し出されました。心がゆったりとします。街並みが美しいと日頃から思っていましたが、建物だけではなく豊かな街路樹が美しさの要因だったのですね。(見とれて写真を撮り忘れ)
それに比べて日本の街路樹は、やせ細っていました。まるで枝を伸ばすことが罪であるかのように、縮こまって見えます。
自治体や国がもっと樹冠を意識した樹木の維持・管理をすることは、気候危機が進行している現在ひっすだとおもいます。
それにつけても、講演を受けながらも浮かぶのは等々力緑地の立派な樹木。870本の伐採をやめさせなければいけません。(2025.6.14)