●日本共産党川崎市会議員団主催の「自治体民営化を考える」学習会に参加しました。講師は弁護士の尾林芳匡さん。以下お話のポイントを紹介します。
▼歴史的には1999年のPFI法、2000年の構造改革特区法、2003年地方自治法改正による指定管理者制度・地方独立行政法、2011年総合特区法、2013年国家戦略特区法などにより、自治体民営化に拍車。
経済的な特徴として、民営化はコスト引き下げを目的とすることが多く、経費削減は賃金引き下げと購買力の低下を招く。
▼PFIとは、民間の資金やノウハウにより公共施設の建設と調達をするやり方。運用にまで及ぶことも。
<問題点>
‣自治体の関与と住民の立場の後退
・自治体と企業との癒着の危険性
・事故等の損失の負担等々。
<具体的事例>
・仙台市・松森天井崩落事故
・北九州ひびきコンテナターミナル経営破綻(北九州市が40億円で買い取り)
・名古屋港イタリア村負債170億、破産
・近江八幡市立総合医療センター、PFI解除。再び直営へ
・野洲市立小学校・幼稚園の維持管理契約解除で5億円経費削減
・岩見沢市生涯学習センター、PFI事業者が市長に多額の献金
<2011法改正>
*対象施設を、航空機・人工衛星・賃貸住宅等に拡大
*コンセッション方式の導入=医療施設、社会福祉施設、中央卸売施設、熱供給施設、駐車場、都市公園、産業廃棄物処理施設等、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を自治体等が有したまま、施設の運営権を民間事業者に委ねる。
<2013法改正>
*民間の資金、経営能力及び技術的能力の活用(運営権の活用、付帯収益事業、公的不動産の有効活用)。
<2015年法改正>
*コンセッション事業の円滑かつ効率的な実施を図るため、公務員退職派遣制度を用意。
<2018年PFI法改正>
*規制と支援の一元化。
*公の施設の指定管理者としての手続き規制の省略(施設利用料金の設定は自治体への届け出だけで議会承認は、事後報告のみ)=議会と住民による規制の形骸化や利用料金増などを招く。
<会計検査院PFI報告書>
会計検査院が、2002~2018年度、国の11機関が契約したPFI事業について調べた結果、次の指摘。
*契約に沿った適正なサービスが提供されていない「債務不履行」=57の事業のうち26の事業で2367件発生。
*不履行の最多は島根県浜田市の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」で、食事への異物混入、受刑者から預かった私物の紛失など合わせて722件。
●この他、指定管理者制度、地方独立行政法人、特区、水道の民営化など続きますが、あまりにも膨大になるので、ここでは省きます。
「公」が行うことがふさわしい事業が、どんどん様々な手法を借りて民営化される弊害を実感してきた私にとっては、いたたまれない思いで聞きました。財界の意向に沿って法改正が続いてきたことがリアルにわかります。
採算性だけで語れない事業がたくさんあります。病院がその最たる例です。神奈川県立病院が独法化されて、収益をあげることに必死にならざるを得なくなったり、賃金が下がりスタッフの離職が続いたりしています。県民により良い医療を提供することに明らかに逆行します。
●直近の身近な例として、中原区内の「等々力緑地再編整備計画」について、石川市議から報告がありました。
<緑地内の17の既存施設>
再編し、将来的な公園のイメージとしては、「各施設の配置規模等については、PFI法に基づく事業者公募において、提案を求め事業を進める」としています。
<新たに導入する施設等>
「民間事業者のアイデアや他都市の整備事例等を踏まえ、これまでの概念にとらわれない柔軟な発想を取り入れ、官民連携により整備」としています。
<維持管理運営手法>
緑地内施設を、「指定管理者制度により一体的に管理する。一部施設には公共施設等運営事業(コンセッション方式)を導入し、民間事業者に運営を委ねることで、施設を最大限活用し、市民サービスの向上と財政負担の削減をめざす」としています。
<公共施設等運営事業の導入>
「対象施設は、施設に稼働率向上の余地があり、興行利用について、民間の追加投資や柔軟な料金設定を行うことで収益向上が期待できる」として、球技専用スタジアム・(新)とどろきアリーナ・駐車場を挙げています。
<再編整備事業の事業手法について>
「PFI事業+指定管理者制度+公共施設等運営事業」(事業期間30年)により持続可能な公園経営を実現、としています。
●まさに民営化手法満載で、「市民の財産を勝手に儲けの手段にするなあ!」と大声で叫びたい気持ちでした。子どもたちとの思い出も多い「等々力公園」、様々な行事が行われ市民に親しまれてきたこの緑地が、「財政負担削減効果」の掛け声の下、もみくちゃにされている図が辛く悲しいです。(2022.3.30)