●中原区内、私の事務所近くに「かわさきゆめホール」があります。「ゆめホールシネマ倶楽部」というのがつくられ、月に1度の上映会があります。
4月上映会は「i新聞記者ドキュメント」(東京新聞社会部記者の望月衣塑子氏にカメラを向けたドキュメンタリー)。24日の夜、観てきました。
これは2019年11月公開の作品。沖縄辺野古の埋め立て問題、森友・加計問題、伊藤詩織さんをめぐる取材などを捉えながらカメラは回ります。
●当時の菅官房長官通じた官邸とのやり取りが軸となっています。そこから炙り出されるテーマは二つあると思いました。
その一つは、政権がいかに国民をないがしろにし、独裁を貫こうとしているかです。
赤土の割合が、沖縄と防衛相が決めた10%以内を超えているのではないかと、望月記者が度々会見で質問しても、「そんなことはありません」の一言、時に「適法にやっています」の一言という具合。説明にならない返答を繰り返しますが、写真に映る土は真っ赤です。
応える気持ちはもちろん、相手が何を問うのかを知ろうとする気持ちは全く感じられません。質問を受け止めようと思えば、相手の顔を見ますが、菅官房長官は一度も望月記者の顔を見ません。冷たい表情でひたすら下を向いています。早く終わらないかという気持ちがありありとみて取れます。
記者会見はポーズでしかないと確信します。かつ政権は違法を平然と行うという事も。
●「質問に移ってください」の司会者の言葉が、間断なく望月記者の質問中に入ります。明らかな妨害で、萎縮効果も狙っていると思います。質問は2問までという他の記者にはない制限も加えられます。望月記者を狙い撃ちにすることにより、他の記者への圧力にしている事は明らかです。
この過程で、2017年8月25日の加計学園をめぐる望月記者の質問が不適切だとして、官邸は、9月1日東京新聞に対して書面による抗議を行いました。「未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答がなされ、国民に誤解を生じさせるような事態は断じて許容できない」という内容です。
未確定だとしたら、それだからこそ質問する意義はありますし、推測に基づく質問も同様です。既に起きた事実を伝える事とともに、少し先の姿が事の本質を伝えることはありますし、当面の影響として国民が知りたい予測も当然あり得ます。
また、もし質問によって国民に誤解を与えると思えば、政権が説明や返答でそれを修正すればいいだけのこと。その為の会見の場です。
明らかに、妨害もこの抗議もマスコミに加えられている攻撃です。
●炙り出される二つ目は、マスコミのふがいなさです。(それに抗う貴重な人たちの存在も忘れてはいませんが、全体としては)
私は、以前「あなたに答える必要はありません」と菅官房長官が言い放ったとき、唖然とするとともに、「他の記者たち、いっせいに退席してよ」と思いました。他の記者は、この場面をどう受け止めたのでしょうか。
記者会見が、なぜ官邸の施し物のようになっているのか、なぜ官邸のメンバーに仕切られているのか、記者クラブの果たしている役割に疑問を持たないのか等々の怒りが、次々と湧いてきます。
また、会見の内容も問題です。例えば辺野古の埋め立て問題で「そんなことありません」と何の根拠も示さず開き直っている官房長官に、どうして他の記者が質問を畳みかけないのでしょうか。望月記者の質問に素知らぬ顔をすることが、自分たちの首を絞め、日本の民主主義を破壊している事に気づかないのでしょうか。いや気付きながらも流されているのでしょうか。
●望月記者の闘いは、記者会見の場だけではなく、回数制限や質問妨害と闘う足並みをめぐって社内のやり取りなどにもあります。
またネット上での誹謗中傷、週刊誌などのねつ造記事、命を狙う脅迫等々、望月記者の後ろ姿にも時に疲れが滲みます。
でも負けないでほしい、私たち国民と志を共有して、政治が人間を虐げることを許さないために!民主主義破壊を許さないために!あなたの姿にどれ程多くの人が励まされている事でしょう!
粘り強く警備と闘い、この記録を残していただいた森監督もありがとう! (2021.4.24)