●長い名称ですが、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)に伺いました。
ここは、神奈川県産業技術センターと(公益財団法人)神奈川科学技術アカデミーが統合・独法化された施設です。
私は4年前の産業労働委員会所属の時に、統合・独法化に反対しました。中小企業の技術支援を担っていた産技センターの役割が薄まることを懸念したからです。
その後の経過が気になっていました。加えて、常任委員会で報告されていたKISTECの株式取得を可とする条例改正が疑問であり、団として訪問させていただきました。
●午前は、神奈川生命科学・環境研究センター(LISE)内にある殿町支所へ。
ここでは、「再生毛髪の大量調整革新技術の開発」を見せていただきました。この研究は、「毛髪の総本数を増加させる」という画期的なものだそうです。毛髪再生医療に必要な技術の確立とヒト細胞を用いた概念実証の達成を目指しています。
もう一つは、「貼るだけの自立型の次世代人工すい臓の開発」です。高分子ゲルを応用した自立型インスリン供給機構とマイクロニードル等の経皮的薬剤送達技術を融合するとしています。これによりインスリン投与が、より簡易にかつ安全に行えるとのことです。
凄いですね、これらの進歩は。説明頂いた方々も生き生きと。
●午後は、海老名本部へ。
腸内細菌叢を適切に制御するプロジェクト、光触媒を中心とした抗菌・抗ウイルス試験、
化学物質の濃度把握を行う有害無機元素分析などを見せていただきました。これらを正確に報告することは、にわか仕立てではとても無理ですが。
これ以外にも、製品の強度測定試験や、3次元の金属加工など、製造に関わる部門は、懐かしい工場の香りも感じることができ、ホッとしました。
これらの研究開発や企業に対する技術支援はとても頼もしく、個々の企業で行うことが困難な計測はじめとした支援は、ますます強化してほしいなと改めて思いました。
●本部とのお話では、私が常任委員会で取上げたこともあり、公的研究機関の株式取得が主な話題となりました。
地方独立行政法人法の改正により、試験研究を行う地方独立行政法人が、法人の試験研究成果を事業活動において活用する場合、出資等することが可能になりました。そこでKISTECが成果活用事業者に対し、出資等ができるよう定款変更を行うというのが今回の動きです。11月の定例会に定款変更議案が出される予定です。
私は次の質問をしました。
▼Q::成果活用事業所への支援に対する対価の意味合いで新株予約権を取得するとしているが、新株取得を伴わなくても技術的支援は可能か、またその例はあるか。
A:可能であり、実際に今までもそのように行ってきた。
▼Q:株購入の意義は。
A:成果活用のベンチャー企業などは、当初財政基盤が弱いので、資金的支援を行う。
▼Q:公的研究機関が株の変動によるリスクをどのような形で吸収するのか。
A:新株予約権は購入の時期を選べるので、市場価格が低い時は購入しない。上場された時など市場価格の上がり具合を見極めて権利を行使するので、リスクを負うことはない。
▼Q:それでは、「立上げ当初の財政基盤が弱い時の支援」という意味を失わせるのではないか。
A:・・・
▼Q:地方独立行政法人法の改正は、神奈川県が求めたものと聞いているが。
A:その通り。
●やりとりしながら、やはり、株取得などは公的研究機関に相応しくないと思いました。財政的支援といいながら、上昇する時に購入し、損をすることが無いタイミングで売却するというのでは、支援ともいえません。従来のように、技術的支援に徹するべきです。
新株予約権は、定められた一定期間内にあらかじめ決められた価格で新株などを購入できる権利のことです。金利や配当率が低い債券などを受け入れてもらうためのインセンティブとして発行されることが多いものです。
株の市場価格が上がっても、当初の一定の金額で購入することを保障しますが、当初定めた期間を通じて株価が一定金額を超えなかった場合は、無価値となります。
新株予約権の一般的な定義、やり取りしたKISTECの現状認識、これらから判断すると新株予約権は意味をなさないように思えますが、わざわざ法改正を求め、県条例も変えようとする動きには、何が込められているのでしょうか。
試験研究業務に携わる方たちの生き生きとした姿を頼もしく拝見しました。それらが十分に活かされるための条件整備は必要ですが、他の目的に引っ張られるような思惑は極力排除したいものだと思います。(2020.11.6)