●昨年の中原区や高津区を襲った水害、その日から一年経った12日、「被害の回復求め集団訴訟を呼びかけるキックオフ集会」が開かれました。
台風19号は、予想を超えた雨量をこの地域にも叩きつけました。多摩川の水位が下水樋管よりも上昇したにもかかわらず、川崎市は樋管ゲートを閉めなかった事から、多摩川の水が下水を通じて流れ込みマンホールから溢れだし、広範に浸水被害を及ぼしたことは、今までに何度も書きました。
●検証委員会の報告でも、樋管ゲート操作の問題点が指摘されました。また川崎市自身も、「操作マニュアル通りに操作していたので誤りではなかった」と度々説明会でも述べながらも、操作マニュアルを、次のように変更しました。「逆流による被害を無くすため、管内水位が付近最低地盤高に達した時点で、排水樋管ゲートを全閉とする」という内容です。
但し、市は率直にその誤りを認めた訳ではありません。この樋管操作マニュアルの変更を示した説明会の折にも、「変更したという事は、以前の操作は正しくなかったという認識ですね」と私が確認しても、決して誤りであったとは認めませんでした。
その市の不誠実な態度に対し、被害を受けた方たちが、被害に対する正当な賠償を求める裁判に取り組むことになりました。
●主催者の訴訟に至るまでの経過説明に続き、講演は、国土交通省OBで、長年京浜河川事務所で多摩川の管理に従事してきた方。
勾配が急な多摩川は暴れ川と言われ、過去にも水害を繰り返してきました。整備計画もありますが、完成には20~30年かかります。
抜本的対策としては、川崎市による雨水貯留施設が必要と指摘します。
当面する多摩川改修について、住民の声の反映が大事とし、危険個所の重点的改修、平瀬川や三沢川などの支川合流点の整備や地下放水路の設置、スーパー堤防案に代わる耐越水型堤防などを示しました。
●次に、西村弁護士は、市がゲートを閉めるべきであったのに閉めなかったその判断の問題点を多くの点から論証。
そして「台風当日、川崎市において、周辺地盤高を超えて逆流を生じさせる程度の水位の上昇は十分予見可能であり、また、これに基づき、水位が各排水樋管の周辺地盤高に達した地点でゲートを閉めた場合には浸水被害を無くし、または少なくとも減少させることができたことが明らかとなっている」と結論付けました。
「排水樋管のゲートを閉鎖するという単純な行為を怠った川崎市の責任の有無が争点」と。
裁判の意義は、「個別救済とともに運動と相まって政策の形成・変更をかちとること」。市の責任を曖昧にしたままでは、災害対策は進まないと強調しました。
●この場でも原告団の結成が呼びかけられました。「原告団総会」は、12月初旬を予定しています。
また「謝罪」「賠償」「再発防止」の目的達成のためには、原告・弁護団だけではなく「支援する会」が必要です。被害を受けていない市民を含め、多くの方の参加が呼びかけられました。
安心して暮らせる生活は、黙っていては得られないことを、とりわけ実感させる昨年の水害、そして今年のコロナです。 (2020.10.12)