●標記は、今回のNPO「かながわ総研」のセミナーシリーズのテーマです。お話は駒澤大学の小栗嵩資名誉教授。
主なところを紹介します。
●コロナ禍の下で、軒並み増収となっているのが、GAFAM(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト)といわれるグローバル企業です。アマゾンは小売業ですが、他の4社はテック企業(ICTテクノロジーを駆使する企業)。
これらの企業がなぜ超過利潤を得られるか。小栗さんは「インターネット上でのシステムやサービスを通じて、プラットフォーム(市場となる基盤)を提供することで、売り手・買い手・関与者が結びつく場を創出」し「巨大なプラットフォーマ―による新たな独占を形成」しているといいます。
●検索エンジンシェアではグーグルが91.8%、ソーシャルメディアシェアではフェイスブックが74.0%、電子商取引シェアにおいてはアマゾンが38.7%、という圧倒的な独占状況です。
買収企業数は、グーグル231社、アップル105社、フェイスブック82社、アマゾン101社に及びます。
GAFAの財務構造の特徴の一つは売上総利益率が高いことです。これは売り上げ原価が殆ど要らないことによります。特徴の二つ目は、主要子会社数が小さいこと。ネット上の販売なので、子会社は必要ないのです。
従来のグローバル企業GMなどと比べると以下のようになります。
Apple | Amazon | GM | |||
売上総利益 (億ドル) | 1018 | 773 | 465 | 937 | 141 |
売上総利益率 | 38.3% | 56.3% | 83.2% | 40.2% | 9.6% |
主要子会社数 | 9社 | 4社 | 30社 | 15社 | 186社 |
●多国籍企業の新たな展開
*株式所有による支配から独占的な経営資源(ノウハウなど)による支配へ。
*主役は製造業から情報業へ。
*タックスヘイブンと関連し、多国籍企業の富の隠蔽化。
*有形資産比率の低下やキャッシュ比率の上昇。
*中国等の国有多国籍企業の増大により、多国籍企業レベルでの国家間競争・摩擦が強まっている。
●多国籍企業に対する規制からの転換
国連やILOによる対決・規制だけでは、コントロール困難との認識により、同意取り付けや取り込む戦略へ。
▼2000年「グローバル・コンパクト(誓約)」
人権・労働・環境・腐敗防止の4分野にわたる10原則を企業に守らせる。
署名組織:企業11,822社(日本285社)、団体3642
▼2006年「責任投資原則(PRI)」
機関投資家の意思決定過程に、持続可能なグローバル金融システムをめざし「環境・社会・ガバナンス(ESG)」課題を求める。
署名組織:3,380企業・機関(日本84社)
▼2007年「ビジネスと人権のための取り組み」
国連人権理事会においてビジネスの人権への影響について、国と企業双方の責任を提起。
▼2011年「ビジネスと人権に関する指導原則」
企業や経済かk津道の基礎に人権を置くことにより、規制強化する狙い。
▼2015年「持続可能な開発目標(SDGs)」
政府・企業・市民が目指すべき2030年までの一体的目標を提示。
●ESG(環境、社会、ガバナンス)情報開示の動向
▼2014年 EU「非財務情報開示指令」
従業員500名以上の企業にESG情報開示要請を決定
▼2016年 EU各国で国内法制化が進行。
▼その他各国での進行
2014年オーストラリア、2015年インド・台湾・マレーシア、2017年シンガポール、アメリカ任意の開示、(日本は導入ゼロ)。
▼ESG情報開示基準の統一化
国連や世界経済フォーラムの提起。
●まだまだ新たな展開も課題もあるので、今回の報告はここまでとし、続きは次回に。
普段とはまた違う視点が得られ、少しワクワクしています。 (2020.10.10)