●10月5日は団会議でしたが、この日は生存権裁判口頭弁論も行われました。団会議を抜ける訳にはいかず、お昼の地裁前集会だけの参加とし、その集会に間に合うよう時計を気にしていました。
で、駆けつけてみると、もう集会は終わり、帰りかけた方からは「あれ、今頃?」と言われる始末。裁判が早く終り、集会も早まったもよう。
がっかりしながらも、井上弁護士に様子をうかがいました。
●生存権裁判というのは、生活保護基準の切り下げが続く中で、まさに憲法25条で保障された生存権を侵すものとして、全国的に取り組まれています。神奈川県でも2015年に48名の原告が立ち上がっています。
私たちもその意義に共鳴しながら、事あるごとに連帯してきました。
●井上弁護士の準備書面によると、主に問題としているのは、「生活保護基準について、行政裁量がどこまで許されるか」という点です。
生活保護法8条2項は、考慮すべき事項として、要保護者の「年齢・性別・世帯構成・所在地・その他」としています。ここでは利用者の個別事情を考慮すべき対象として、物価変動は考慮事項とされていないことを強調しています。
国民年金法が物価変動率によって基準が変動することを明示していることとの違いを、指摘しています。
●この違いはなぜ生じるかについて、井上さんは、そもそも生活保護は、申請の日から14日以内にしなければいけないとされている、つまりギリギリの生存を支える生活保護制度は、時間をおかずに対処しなければならない点を上げています。
物価変動などの反映は年単位の時間を要し、生活保護の制度になじまないとしています。
また8条2項は同時に、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」を超える贅沢を禁止したに過ぎず、文面から、超えたものについては一定の幅を持たせているとも指摘し、わずかの物価下落があったとしても、それを包含することが可能であるとします。
●生活保護基準の改定は、各種統計資料の分析などが必要であるにもかかわらず、今回は、専門家の意見によらず、「物価変動」という考慮すべきではないことを根拠とする「他事考慮」にも当たると指摘。
また仮に物価下落を考慮できるとしても、下落率4.78%は、「過剰考慮」であるとします。
一方で、生活保護費切り下げありきで事を進め、生活実態の把握が不十分な場合は「過少考慮」の恐れもあるとしています。
●これらをそれぞれ検討すると、今回の引き下げは、憲法25条・生活保護法8条に違反して無効であって取り消すべきことが明らか、と結論付けています。
法律的な検証とともに、ぎりぎりの生活をしている生活保護費の切り下げというのが、本当に許せません。最大10%、平均5.5%もの過去に例のない削減が行われました。これまでの陳述でも、「母親代わりであった姉の葬式にも出られませんでした」「エアコンも買えない、これのどこが文化的なのか」などの実態が語られていました。
削る対象が間違っています。情けない国です。こんな裁判を起こさなくてもいい国に変えていかなければ、と切に思います。 (2020.10.5)