●切実な声が寄せられている緊急小口資金や総合支援資金。市町村社協が受け付け、神奈川県社会福祉協議会(社協)が審査を行っています。
神奈川県の支給が遅いと、ネット上でも怒りの声が集中しています。私たち議員にも多くの声が寄せられています。切実な声に接する度に、何とか早めたいと、県とのやり取りも重ねてきました。
●寄せられる「もう生きていけない」という悲鳴の一方で、申請書の山と立ち向かう職員の方のご苦労も想像がつきます。ツイートなどで「社協の方も懸命に頑張っていますから、もう少し持ちこたえて下さい」といえば、「こっちは命がかかっているんだ!」との声が返ってきます。その切実な怒りももっともです。
このようなやり取りが続いた数ヶ月です。
社協の現場を見せていただきたいと思いながら、私達がお邪魔するとさらに業務を遅らせてしまうだろうとの懸念から訪問も憚られましたが、ようやく県社協にうかがうことができました。
●業務量が極端に増えています。
▼2019年度1年間で、217件(緊急小口資金197件・総合支援資金20件)
▼今年度は7月17日時点で、46,831件(小口資金35,123件・総合支援資金11,708件)
▼今年度3か月半で、昨年度の何と215.8倍の申請件数です。ちなみに上記申請件数に対し、決定件数は、小口資金34,838件、総合支援資金5,240件です。
●これらを受け止める体制の困難もありました。
通常の担当課は9人ですが、ピーク時は他課からの応援・県からの応援含め20人、プラス派遣スタッフ50人以上で対応していました。
生活福祉資金システム端末を増やすのにも時間がかかりました。中国からの資材が止まっていたことなどが要因ということです。
その為、人を増やしても、システム入力で業務が止まるという事態もありました。
●この間の困難は、一気に申請が殺到した事とともに、コロナの深刻な事態に対応するために、融資の取り扱いが次々と短期間に変化していったことです。厚労省の通達が届く前に、取扱いが変わっていたという具合です。
事態の進展に現場がついていかないというのは、他にも多くの分野で続出しています。
コロナ感染症の広がりが、暮らしにどれ程深刻な影響を及ぼしたかを表しています。その事態に対応するために、国民的要望が次々出され、それに応えて制度がどんどん変わっていくことを、私たちも度々経験していました。
必要な変化ではあったのですが、それに伴う現場のご苦労ももよくわかります。
●伺った苦悩のもう一点は、本来自立支援のための融資であるのに、困窮度が増す中で支援抜きの融資になっているという点です。
自立支援を目的としながら、相談抜きのお金だけが求められる事態に「これでいいのか…」という反問をしながら、押し寄せる申請に向かう日々だったとも伺いました。
この困難、私はわかるような気がします。業務に携わる方の矜持とでもいうべきものを感じます。
この受け止めが、委託など含むスピードアップを重視する体制への切り替えを遅らせた一因かも知れません。
こういう事を言っていると、切迫した方からは「冗談ではない」という声が返ってくると思いますが。
●社協としての苦しさは他にもあります。
社協は、営利を目的としない民間組織で、民間で行われる社会福祉活動の支援が主な仕事です。ボランティアや市民活動の支援、地域での生活支援、高齢や障害のある方への支援など多方面にわたっています。
資金の貸し付けだけが仕事ではありませんから、社協上げての今回の対応で、それぞれの分野に遅れが出ているのも実情です。
また、全国社協・都道府県社協・市町村社協とありますが、それぞれが個別の法人です。指示系統の中にある組織ではないことも特徴です。
●お話を伺った後、受理業務を行っている講堂に行きました。4万件を超す短期間の受理とはこういう事か、と思わせる光景でした。
舞台を初めそこかしこにぶ厚いファイルが並びます。さらに書類の山、段ボール…審査の現場の大変さは言うまでもありませんが、この後も債権として管理することを考えると唸ってしまいます。
この講堂も他の使用目的があり、8月には移動しなければならないそうです。移る先がまだ決まっていないとか。この引っ越しも容易ではありません。 (2020.7.22)