●物議をかもしている持続化給付金の「申請サポート会場」を訪ねました。
この給付金業務を、経産省は「サービスデザイン推進協議会」に委託。その法人から電通、さらに電通子会社へと委託が重ねられています。その先もあるかもしれません。ため息が出るほどの多重構造です。委託の度に、委託料は減っていきます。当然労働者に届くお金は細っていきます。
●この構造的問題も看過できないのですが、利用する側からいえば、電子申請しか受け付けていないことが大きな問題です。それが不可能な方もたくさん存在しますから。
郵送も可とすることを求めていますが、それは今のところ叶わず、電子申請ができない人には「申請サポート会場」を用意するというのが経産省の答えです。
川崎には、 現在2カ所 。1カ所は元住吉駅近くにあります。
●「状況を伺いたい」というと、手に消毒液を掛けられ、外で7~8分待たされました。ようやく出てきた人に名前と用件を伝えると、また「お待ちください」と引き続き外で。
3人目の取次の方は、「外でなら話せます」と。
「はあ?その理由は?」「入場すると感染した場合の追跡が可能なように登録しなければいけません」との回答。
私は登録することを認め、ようやく会場に入れてもらえました。
最初の窓口で、私の名刺を見ながら何やら入力。どんな扱いで登録されているのか。尋ねてもはっきりしませんでした。
●室内には入れてもらえましたが、以下の概要を把握するのは、立ったままでのやり取りとなりました。
▲一日の利用者は約40人。
▲一人の利用者が申請に至るまでに要する時間は、平均約一時間。
▲9時~17時の間、職員9人体制。一週間休みなしなのでシフト制を用いている。「では、擁する職員は?」と聞くと「十数人」との答え。「正確には?」ときくと「わからない」との答え。「あなたはここの責任者ですよね」「ええ」とのやり取りも。
▲申請不可に至るケースで多いものは何かを聞いたところ、「売り上げ減が50%に満たないもの」「給与所得者や雑所得者」との答えでした。
私が「国会答弁で、この両者も対象とされましたよね」と投げかけると「よくわかりません。その話は6月中旬からと言われています」と。「どこから言われたんですか?」に対しては「よくわかりません」。
▲「皆さん、派遣会社に登録されている方ですか?」「はい」。
「派遣会社はどこですか?」「いやー…」
賃金は答えないだろうと思い聞きませんでしたが、「皆さん知っている方ですか?」と問うと「えー」と。
▲「この会場はいつまでですか?」「わかりません」
▲これも答えてもらえないだろうと思いながら「今回報道されている運営体制などで思うことはありますか」と聞くと「いやーそれは…」という感じでした。
●がらんとした会場は、感染対策とはいえ、どこまで活用されているのかと思いました。40人の利用者に対して9人というのは、ひとりのスタッフが相対するのは、一日に4.4人。ちなみに、ここでは審査はしていません。つまり申請後の後処理はありません。
業務は直接利用者と相対するだけではないことはよくわかりますが、一つの指標として考えるならば、適正とは言えません。業務には、充分な体制を保障すべきと考える私には、あまり指摘したくない事ですが、運営体制という点では疑問が残ります。
窓口に二人ほど座っています。それ以外に3~4人が会場内にズーッと立っているのは、威圧的な感じさえありました。
私が30分ほどの間に、利用者らしき人は、一瞬の人含め3人でした。
●外で待たされている間に許可を得て、外観だけは写真に撮ることができました。
会場内では、写真は禁止されました。人物はもちろん写す気はなく、記載台などを撮りたいといったのですが、無理でした。
「この場を撮ると、どんな差支えがあるのですか」と問うと、「上から言われています」「上ってどこですか?」「事務局です」「どこの事務局ですか?」と聞くと首をかしげていました。
●会場から出ても、私は複雑な気持ちでした。「サービスデザイン推進協議会」や電通の問題点とは別に、「あの若者たちの職場としてどうなんだろう」と。
仕事の流れもよくわからず、指揮命令も明確になっていず、会社名を名乗ることもできず、この職場がいつまで存在するのかもわからず…
日本でこのような働き方は少なくないと思います。職業経験が蓄積され、その後の見通しを持てるといった働き方には程遠く、働く人達の立場からも、日本社会としても、危機感を覚えてしまいます。(2020.6.9)