●「保育の『質』向上をめざして」-川崎の保育労働に関する実態調査報告-という貴重な結果がまとめられました。
川崎市保育問題交流会(労働組合・NPO・研究機関・弁護士・保育園経営者)と専修大学の兵頭ゼミが共同で進めた実態調査です。
●調査は、川崎市内全認可保育所361園の保育士・看護師・栄養士などの職員を対象として、昨年8月~9月に行われました。配布調査数は3610票、回収数は772票という事です。
この調査を始める時の会議に参加したことがありますが、調査対象、調査項目、基本情報をどこまで把握するか、どのような問いにすると実態があぶり出されるか等々、アンケート作成までの苦労は、メンバーの多彩さを反映して並大抵ではありませんでした。
集計や分析もさぞ大変だったことでしょう。
また、学生と市民団体で進めた調査というのも初めての試みだと思います。
●これらの発表が22日に行われました。以下、アンケート結果の主な項目について触れます。
<兵頭ゼミの学生報告から>
○1.保育の質を改善する重要な要素としてトップに挙げられているのが、「賃上げ・待遇改善」です。
賃金実態は45パーセントが20万円以下という結果です。ちなみに全産業平均は30万4,000円です。
○2.保育士等職員数については約70パーセントが足りないと感じています。
○3.調理師がいない保育園は全体の15%、そのほとんどが私立保育園でした。栄養士不在は、圧倒的に株式会社が運営する保育園でした。
外部委託や外部搬入において事故が起きていることも指摘されました。
○4.22%の保育園に園庭がありません。公園利用を余儀なくされていますが、その94%が公園が混んでいると指摘しています。保育士の公園利用時のストレスは非常に大きくなっています。園児の安全確保だけではなく、園児以外の子どもとの関係にも非常に気を遣うとのことです。
公園帯在時間が短く、子どもは満たされないとの指摘もありました。
*規制緩和が保育に影を落としているとまとめています。労働環境の悪化が長時間保育を招き、食の外部委託・外部搬入を可としたことにより食事の質が問われ、園庭のない保育所が遊びの制限を招いていると指摘しています。
●<保育問題交流会の川岸弁護士の報告から>
学生報告とダブる箇所を除きます。
○1.経験年数が16年以上の保育士は、公設公営保育園に集中(67.1%)しており、逆に株式会社の場合、7年までの短いキャリアが6割を超えています。
勤続年数についても、公設公営では11年以上の長期勤続が8割を超えているのに対し、私立(社会福祉法人)は、勤続7年以下が8割、私立(株式会社)では9割という結果が出ています。
○2.賃金格差も顕著です。
公設公営では500万円を超えるのが約6割に対し、社会福祉法人では300万円を下回るのが6割弱、株式会社においてそれは7割に達しています。
公設民営の施設も、上記の項目でほぼ私立と同様の結果を示しています。民営化を見直すべきと指摘しています。
●私達が今まで実感してきたことを裏付けるデータがまとめられ、いずれも残念ながら納得できるものでした。
子どもにとって大切な要素「食」と「遊び」が規制緩和の犠牲になっていることに胸が痛みます。
この国はとんでもないことを行っています。公助を忘れ安上がりの政策を追求していては、健やかな発達保障・健全な社会は描けません。
(2018.9.22)