●自衛官セクハラ国賠訴訟の第12回期日を傍聴しました。
今回は前回の期日に寄せられた蟻塚医師の意見書(原告がセクハラとその後の組織としての排除によって重度のPTSDを負っているという診断)に対する航空幕僚監部主席衛生官丸田医師からの所見が提出されました。
丸田意見書は「原告の個体的要因を検討するための情報が記載されていない」ので、「原告のPTSDが1.28体験に起因するとの診断は支持できない」としています。
●これに対して、被告代理人と原告の陳述がなされました。
<被告代理人の主な論点>
①1.28の電話でPTSDになるぐらいであれば、原告が容易に精神疾患にかかりやすい要素があるのではないかと言っていることに対して、「自衛隊は殺傷能力を持つ武器を扱うことや過酷な訓練を前提として採用されているのであるから、容易に精神疾患にかかるような応募者は排除されているはず」と投げかけ、「丸田医師も主席衛生官として採用面接に関わっているのであろうから、(原告の個別的要素に帰するという判断は)自身の職責の否定につながるのではないか」と指摘。
②被告は本件電話(物品が届いていないことについて加害隊員が「馬鹿野郎」と強い口調で叱責し、原告の交際相手の名前を持ち出し「やりまくっているからって業務疎かにするんじゃねえよ」などと罵倒した)は懲戒調査において認定されていないとしているが、事後に裁判において認定されているのにもかかわらず、未だに組織として認めていないのは恐るべきこと。
③本件電話から初診まで10年間、被告は原告の状況を把握していないとしているが、職場においてハラスメントにより不調に至った原告のケアは被告の役割であり、まさに責任放棄。
④丸田医師は、専門が児童精神科と周産期メンタルヘルスであり、外傷性精神疾患を専門としている訳ではない。また原告とは接点がなく、診察もしたことがない。(きわめて豊富な臨床経験を持つ蟻塚医師は、実際に原告の診察を何度となく行っている)
<原告の主な訴え>
①蟻塚医師はセクハラにより、私がどのように壊され、セカンドレイプ(就業環境上でのハラスメント)が私を蝕むさまをくみ取り、精神的に追い詰められていく状態を明らかにしてくれた。
②自傷行為や自死がない限り、PTSDとは診断されないのか。診察もしていない私になぜそんな判断を下すのか。
③私は自傷行為や自死を選択せず、「普通に生きたい」という強い思いをかなえるべく、また四六時中付きまとう不安や恐怖と向き合いながらそれを解決するために「国家賠償請求」という選択をした。
④私はここで歯を食いしばってでも働かないといけない。その為に健康維持も必死で行っている。法廷において「恐怖から逃れたい」気持ちを押し殺してでも、裁判官に事実を認めてもらうためにここに立っている。自分の問題に立ち向かい解決に全力を注ぐ、それが「原告」という責任と立場。
●孤立無援の自衛隊組織の中で15年、PTSDに苦しめられながら裁判で闘う、原告の強い意思は何に支えられているのかと思うことがありましたが、今回の原告陳述で、その意思の源を見たような気がしました。この驚異的な意思に感動を覚えながらも、セクハラや性暴力は、否応なく人生を変えてしまうと思いました。
この後「軍隊への男女共同参画――女性の権利の実現と軍事化の諸相」と題する講演がありましたが、このことはまた別途報告します。(2025.10.2)