●「地球沸騰化を止めるために」を掲げた学習会を開催しました。
主催は私の属するかながわ総研も参加している「平和で明るい神奈川県政をつくる会」。講師は、歌川学さん(産業技術総合研究所キャリアエキスパート)。「神奈川県の脱炭素転換と地域発展」をテーマとして話していただきました。以下、講演のポイントです。
●気温上昇を1.5℃未満に抑える為には、2030年までに、CO2を2019年比で半減させる必要あり。
▲CO2削減率(1990⇒2023年):英国 -48.3%、ドイツ ―43.7%等々続く中で日本は ―14.5%に止まり、いわゆる先進国の中で11位。
▲再エネ電力割合(23年度):ノルウェー 98.5%、デンマーク 86.5%…に対し日本は 23.7%に止まり21位。
▲石炭火力割合(1990⇒2023年)
・日本は唯一14.3%⇒28.5%と割合を増やし2023年で恥ずべき第一位。
・2023年で第7位のデンマークは90.7%⇒7.4%
・12位の英国は64.6%⇒1.6%
●経済性ではどうか
▲神奈川県光熱費2.7兆円(2022年度)ほぼ域外流出(省エネ・再エネ行えば域内で回る)
▲発電コストは太陽光事業用地上約10円/kwhに対し、石油火力約47円/kwh、石炭火力32円/kwh、原発約40円/kwh
▲日本のエネルギーの3分の2は熱として捨てられている(大きな省エネの可能性あり)
▲省エネの重点:省エネ機器・断熱建築・省エネ車
(ニューヨーク州・市では、新設建物へのガス器具設置を禁止する政策開始)
▲すべて電気自動車になっても、電力使用量は現在の10~15%増にとどまる
▲家庭やオフィスの熱源をすべて電気ヒートポンプに変えても、電力消費より省エネ分の方が大きい
●省エネは大事
▲海外の動き
・大手企業が、取引先にも省エネやサプライチェーンのCO2排出ゼロを求める
・地域企業も今後再エネ100%の生産・サービスに切り替える
・自治体・地域も手段を共有
▲家庭では省エネ機器導入の効果大
▲断熱建築の普及
▲運輸対策(燃費の良い車へ、電気自動車への転換、公共交通への転換)
▲再エネ供給に合わせた電力消費シフト
●神奈川県の光熱費削減・設備費追加と地域経済
▲膨大な光熱費の域外流出を削減(国全体では15~30兆円の化石燃料費流出)
▲地域中小企業で対策設備受注可能
▲光熱費削減型の消費に回ることと、設備受注で地域経済効果・雇用創出効果
●公的な情報提供・アドバイス・省エネ診断
▲自治体がエネルギー事務所を設立(研究者・実務家・専門化に協力を求める)し具体的対策に寄与
▲省エネ・再エネ相談窓口の設置(費用対効果、投資回収年など付帯的相談に応じる)
●脱炭素対策と地元企業
▲地元企業が再エネ発電を行うと売電収入が地元に
▲断熱施工・再エネ設備など地元企業が行うと工事費が地元に
▲メンテナンスも地元企業が行うことが可能となり地元に
▲自治体出資による地域新電力例もあり
●まとめとして
▲神奈川県には2030年CO2 60%以上削減、2050年ほぼ100%削減の技術的可能性あり。
▲対策により膨大な光熱費を半分にすることが可能。設備投資の「もと」は取れる
▲脱炭素は地域に大きなメリット(地域中小企業の受注促進、光熱費の域内での流れなど)
●日本のCO2削減率や再エネ電力割合の低さにため息、さらに世界で唯一火力発電の割合を1990年比で増やしている異常さに恥じ入るばかり。その結果2023年の火力の割合は世界でトップ。
早くこれを切り替え、地球沸騰化を止める役割を十分果たさなければ、命の保障はありません。
神奈川県の可能性にも言及していただきましたが、再エネは地元活性化の宝庫ですね。(2025.9.23)