●日立製作所で再雇用を拒否されている村田光裕さんと田中章夫さんの報告と学習のつどいに参加しました。
●村田さんは、2020年から65歳以降の再雇用を希望していたにもかかわらず、2021年施行の「改正高齢者雇用安定法」の適用を受けずに2022年4月30日付で雇用契約期間満了として解雇されています。
田中さんも65歳以上再雇用を希望していましたが、再雇用を拒否され交渉も打ち切られています。
職場には65歳以上の再雇用労働者は存在していますから2人に対する差別に他なりません。この不当な処遇に抗して、二人は今も再雇用を求めて闘っています
●改正高齢者雇用安定法は、70歳までの雇用は努力義務としています。日立は「努力義務」だから、実行しなくても法律違反にはならないと主張しています。しかしながら、法制定から3年を経てその制度について何の準備を進めていないと大威張りで公言するのでは、大企業の社会的責任が問われます。
日立も署名をしている「国連グローバルコンパクト」は、人権の保護と尊重をうたっています。
●第二部は、労働者学習協会理事の筒井晴彦氏による「ビジネスと人権」の学習です。
▼国連「グローバル・コンパクト」(2000年)
原則1 人権の保護を支持し尊重すべき
原則2 企業は自らが人権侵害に加担しないよう確保すべき
▼国連「保護・尊重・救済の枠組み」(2008年)
(1)国家の義務・・・国は権利を侵害せず、権利の実現を確保する。人権機関を設置し人権状況の監視と勧告を行う。
(2)企業の責任・・・企業は人権を侵害しない。被害が発生した場合には救済に取り組む。
(3)救済アクセスの拡大…救済は、司法的・行政的・立法的な方法を通じて行う。
▼国連「ビジネスと人権指導原則」(2011年)
<指導原則>は国家の義務、企業の責任、人権デュー・ディリジェンス(人権侵害防止のための調査・対策)、救済へのアクセス拡大など31の原則を示す。うち14原則が企業の責任。
▼国連「ビジネスと人権国際条約案」(2018年~)
(1)国の義務・・・ビジネス活動に関連して人権を尊重・保護・実現・促進するための国の義務の実効を明確にし、促進する。
(2)企業の責任…人権に対する企業責任の尊重と実行
(3)人権侵害の防止
(4)人権侵害の救済
(5)被害者救済のために国際協力を促進
*労働者をコストではなく財産として考える。
*熟練労働者は、企業の競争力の源泉。
*人件費や人員の削減は、万策尽きたのちの最後の手段。
*企業のリストラとは、必ずしもコスト削減や人員削減を伴うものではない。
▼「欧州社会権の柱」20原則
①教育・訓練・生涯学習
②ジェンダー平等
③機会均等
④積極的な雇用支援
⑤安定した柔軟な雇用
⑥公正な賃金
⑦雇用条件に関する情報と解雇からの保護
⑧社会対話と労働者の参加
⑨ワーク・ライフ・バランス
⑩適切な労働環境と個人情報保護
⑪育児と子供支援
⑫社会保護
⑬失業給付
⑭所得の最小限保障
⑮高齢者の所得と年金
⑯医療
⑰障がい者の包摂
⑱長期の育児・介護(適正な費用で良質の介護育児サービスを受ける)
⑲住宅とホームレス支援
⑳エッセンシャルサービスへのアクセス
▼企業行動憲章(日本経済団体連合会)
1 持続可能な経済成長と社会的課題の解決
2 公正な事業慣行
3 公正な情報開示、ステークホルダーとの建設的会話
4 全ての人の人権を尊重する経営
5 消費者・顧客とのい信頼関係
6 適切な働き方、職場環境の充実
7 環境問題への取り組み
8 社会参画と発展への貢献
9 危機管理の徹底
10 経営トップの役割と本憲章の徹底
▼国際人権動向が企業を動かす
*ANAホールディングス・・・英国現代奴隷法への対応をきっかけに日本企業で初めての人権報告書を発表
*積水化学工業・・・「人権の取り組みは企業の責任として当然行うべきこと」と外国籍社員からの指摘を受けて
*帝人・・・諸外国の個人情報保護法令への対応も重要
*トヨタ自動車は、欧州トヨタの行動規範の影響を受けて、日本のトヨタ本体の人権方針が、性別・年齢・国籍・人種・性的志向・性自認等々の差別や個人の尊厳を傷つける行為を認めないものへと変わった。
▼国連「訪日報告書」
*高齢者に対する差別的雇用慣行が損愛する。
*他のOECD諸国と違い年齢差別禁止法が存在しない。
*雇用主が定年制を定め、高齢者に劣悪な仕事を押し付けている。
*「日立は、人権・労働法に関する国際的な条約に従い・・・」
*「雇用機会均等を推進する。差別は日立では絶対に受け入れられず・・・」
●国際人権規約や企業の規範が飛躍的に進んでいるのを実感しました。ILOの指摘などは、我が意を得たりの思いで受け止めました。
日立も立派な企業倫理・行動規範を持ちながら、やっていることがあまりにもお粗末。人権が尊重される国と企業行動が注目される必要があります。(2024.7.21)