●学校統廃合があちこちで問題となる中、「神奈川県の高校統廃合問題を考える」と題する和光大学山本由美教授のお話を伺いました。
▲神奈川県の特徴は、高校の統廃合の比率が大きいこと。
2002年~2020年の廃校数167校のうち、小学校65校、中学校26校、高校76校。他の都道府県の多くは、小・中・高と統廃合の数が小さくなっていくのですが。
(エーッと思い表をチェックしてみると、統廃合において小学校の数より高校の数が多いのは、なんと神奈川県だけ)
▲政策的に進められてきた学校統廃合
*2010年~「グローバル人材」養成 学校の複線化(経産省等)
*2012年~「平成の学制大改革」 ➡ 小中一貫校(第二次安倍政権)
*2014年~「地方創生スタート」新自由主義的地域再編へ
*2014年~2016年度「公共施設等総合管理計画」を総務省が要請
*2015年 内閣府経済財政諮問会議「学校の適正化規模化」
*2015年 統廃合の「手引き」58年ぶりの改正(文科省)
▲大阪発の「定員割れ→機械的統廃合」、各地で拡大
*東京 オンラインスクール乱立
*岡山 2019年定員割れ機械的募集停止導入→2022年見直しの機運
*長野 都市部・地域部に分けた基準で機械的統廃合
*島根 機械的統廃合を2018年に見直し
▲産業構造の転換に対応した高校のスクラップ・アンド・ビルド
*製造業、卸小売業中心→グローバル化する知識集約型経済
*兵庫・神奈川などで全県的な学校再編計画が進行
▲公共施設等総合管理計画による誘導
*計画策定費用に特別交付税
*施設解体費用に地方債適用(75%)
*最適化・多機能化・複合化・長寿命化に地方債適用
*数値目標の策定やPPP・PFIなど民営化を進める方針を示し「延べ床面積」のような総量で評価
▲神奈川県公共施設等総合管理計画
*計画期間10年
*目標:財政負担の軽減・平準化、公共施設等の最適な配置の実現
▲学校施設の基本方針(「高校100校新設計画」1973~1987)
*老朽化対策により長寿命化を図る
*「県立高校改革」により、再編・統合に取り組む
*設計施工一括発注方式など民間活力を活用した施設整備の推進
▲県立高校改革実施計画
*改革の柱 ①質の高い教育 ➡ 実際には序列化・別格の学力向上進学重点校
②学校経営力の向上
③再編・統合の取り組み
*コミュニティスクールについて企業関係者を委員に入れるのは神奈川の特徴
横浜国際高校学外委員4名中3名は企業・団体代表
▲対抗軸をどのようにつくっていくか
*シカゴでは教員組合・保護者の共同で対抗軸を生み出した
*神奈川県は他県に比較し、極端に条件整備が遅れている
●全国的な視野で神奈川県の「県立高校改革」を見ると、いくつかの神奈川としての特徴はあるものの、政府の政策が貫徹していることがよく解ります。様々な誘導策に乗せられてそれは進行しています。
学ぶ生徒の立場から、生徒にどのような場が必要かという観点が抜け落ちていることは、私たちがこれまで指摘してきた通りです。
国の誘導策を率先して実行し、神奈川県の全日制進学率は2022年度で89.6%(前年度比0.7ポイント減)で2014年度以来の90%割れ。
全国比較では2021年3月の数字しか見当たりませんが、全国平均91.27%のところ神奈川県91.02%となっています。(2023.6.18)