●神奈川憲法会議(憲法改悪阻止神奈川県連絡会議)が行う教育長に対する要請に、私も県議団として同行しました。
要請内容は、卒業式及び入学式において ①「日の丸」の掲揚及び「君が代」の斉唱を行わないこと ②「日の丸」や「君が代」に対して規律や斉唱を拒む教職員に対して調査や処分を行わないこと ③式典に参加する児童・生徒・保護者・来賓等に対し起立や斉唱を促さないこと の三点です。
申し入れに対するコメントは「教育委員会に要請のあったことを伝える」というのみ。
●1999年に「国旗・国歌法」が成立しましたが、政府は「内心に立ち入ったり強制はしない」とし、尊重義務がないことを国会で明言しています。
一方、1989年改定の学習指導要領において「入学式・卒業式において国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」とされています。
そもそも、教育基本法は第一条で「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と教育の目的を定めています。
日の丸はアジア太平洋地域の各国にとっては、侵略と殺戮(さつりく)の象徴です。また君が代は、天皇の治政を永久なものとして讃える歌詞であり、日本国憲法とも教育基本法とも相いれません。
このような疑義がある「日の丸」及び「君が代」の起立斉唱を促すことは、児童生徒の人格形成にふさわしいものとは言えません。
また、教職員への強制及び処分についても、最高裁2011年5月30日判決は、「教員への制約は必要性、合理性を超えてはならない」とし、2012年1月16日判決は、不起立行為等は「個人の歴史観ないし世界観に起因するもの」であり、「積極的な妨害等の作為ではなく」その行為に対する一部教員への処分は、裁量権の逸脱としています。
●国旗及び国歌に関する法律は、「第一条国旗は、日章旗とする。第二条国家は、君が代とする」というシンプルなもの。それぞれ2項で形と楽曲を別記で示していますが。
このシンプルな法律でかつ国会で尊重義務がないと明言されながら、なぜ教員現場でこんな扱いになっているのでしょうか。
教育委員会が指導要領を根拠とし、今年各県立学校長あてに送った文書には次のように細かな指示がなされています。
「入学式及び卒業式の実施に当たっては、儀式的行事であることを踏まえた形態とし、教職員全員の業務分担を明確に定め、国旗は式場正面に掲げるとともに、国歌の斉唱は式次第に位置付け、式次第における国歌斉唱の際には教職員は起立し厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われるよう」と。
また「教職員が校長の指導に従わない場合や、式を混乱させる等の妨害行為を行った場合には、県教育委員会としては、服務上の責任を問い、厳正に対処していく」とも。
●卒業式や入学式は生徒の成長の節目を祝福し、思い出とともに励ましを送る行事です。
こんな「がちがち」の指示を出し、内心の自由までおびやかしながら行われる指導は、憲法や教育基本法に反していると思いますし、教師においても生徒においても民主主義に対する感覚をマヒさせますし、また何より祝福や励ましとは無縁です。
国歌国旗法制定以前、1989年学習指導要領改訂前からこのような指導は実施されていたといいますから、30年以上こんな指導を続けて、何が得られているのか、寒々とした気持ちに襲われます。
東京では、不起立や伴奏拒否によって不利益処分を受けた教員は300人に及びます。神奈川県でも、2005年に初めて不起立者の人数を明らかにするアンケートが実施され、2016年には教職員107名が原告となり「国旗国歌忠誠義務不存在確認訴訟」が提起されています。
教師の良心や内心の自由を踏みにじってきた歴史、暮らしがかかっていても起立することを拒否した教師の誇りや苦しみを物語る歴史です。(2023.2.8)