●いよいよ結審となる生存権裁判の裁判前集会に、上野県議、大山県議とともに参加。
7年前のみぞれまじりの生存権裁判の始まりを思い出しながら、挨拶をしました。
2013年に始まった「生活保護水準の最大10%の引き下げ」は違法として、2015年から「生存権裁判」が次々提訴され、全国で1000人以上、神奈川でも400人余りの方が原告となり闘ってきました。既に、名古屋・札幌・福岡・京都・金沢・秋田の6原告団に対しては、棄却決定がなされ、勝利判決は大阪原告団のみ。
●私は他の聞き取りなどがあり、傍聴は叶わず、控室に戻りましたが、これまでの陳述などが思い返されます。「冠婚葬祭にも出席できない」「お風呂やシャワーを減らさざるを得ない」「暖房費節約のため、布団の中で生活」等々。こんな暮らしを強制する生活保護の引き下げ、なぜこんな事ができるのかと思います。
今回結審で行われた陳述にも接することができました。
原告Sさん「病気がちな私が生きてこられたのは、この憲法25条のおかげです。憲法25条は国の宝です。国民の宝です」
原告Kさん「生活保護課に行きましたが断られました。私は泣きながら、それでは死ぬしかないのですかと訴えたところ、あなたがそう思うのであればそうしなさいとはっきり言われました。(中略)この度の切り下げは、人間として最低限度の生活すら遠ざけています」
●原告代理人井上弁護士の意見陳述を以下に要約します。(太字は代理人による)
1)デフレ調整は生活保護法第8条2項違反
8条2項が考慮すべきと明示しているのは「年齢」「性別」「世帯構成」「所在地」「その他保護の種類に応じて必要な事項」とされ「物価変動」は考慮事項とされていない。
また同項但し書きが「かつこれを超えないもの」とした趣旨は、「保護の種類に応じて必要な事項を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」を超える贅沢を禁止したに過ぎず、「最低限度の生活の需要」を下回っては生きていけないので、それを下回ることは許されないが、1円でも上回ってはいけないというものではなく、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」までの間の「幅」は認められている。
2)「デフレ調整」導入の不合理性
では、なぜ今回引き下げに限って、「デフレ調整」が導入されたのか。原告準備書面21で詳述した通り、今回の引き下げは、社会保障10%削減を公約としていた安倍内閣の下、財務省主計官が、生活保護法8条の趣旨を無視し、一般民間最終消費支出が「1.7%」しか下落していないのに、生活保護利用者の最終消費支出が「4,9%」も下落しているなどと誤った前提事実の下、生活扶助基準は「1.1%」しか下げられていないので、生活保護利用者の可処分所得は余っているはずだから、生活保護法第八条2項但し書きにより「これを超えている」として引き下げるよう仕向けたもの。
民間最終消費支出が4・9%下落しているのに対し、生活扶助基準が1.1%しか下落していないことを問題視しているが、そこでいう「民間最終消費支出」は、厚生労働省作成の「生活扶助相当CPI」の下になる発想である。
国民年金法と違って生活保護基準については「物価変動」を考慮事項としていない
*「生活扶助CPI」=2013年1月、厚生労働省が生活保護基準の見直し方針を公表するにあたって提示した同省独自の物価指数。
3)違法引き下げ結果の重大性
一般国民の実質的な可処分所得も1.1%は増加しているので、単純計算しても4.78-1.1=3.68%しか乖離(かいり)していないことになる。デフレ調整は4,78%分として約580億円を削減したのであるから、金額に換算すると、580億円×1.1/4.78=約133億円もの取り過ぎとなり、計算過誤の結果は重大である。
そのうえ、白井証言や陳述書で明らかなとおり、真の「生活扶助CPI」の下落率はせいぜい1.78%であり、一般国民の実質的な可処分所得が1.1%増加していたことを考慮すれば、「乖離幅」は1.78-1.1=0.68%、金額にして約82億5100万円に過ぎず、まさに「歪み調整」分の90億円によって調整済みとなり、デフレ調整自体が不要であった。
よって、本件生活保護基準引き下げ処分は、生活保護法第8条2項及び憲法25条に違反し。結果も重大であるから取り消すべきである。
●聞くだけではきっと理解できなかったでしょうが、法廷でこれらを聞きたかったです。判決言い渡しは、10月19日午前11時30分と後から伺いました。(2022.4.20)