●かながわ総研の予算学習会に参加。全体的な分析ももちろんですが、気になるのはやはり健康医療局関係。
●予算の前に、これまでのコロナ対策を検証。報告の中で次の事実は重要だと思います
ア)昨年12月8日:神奈川県のそれまでは、酸素投与が必要・65歳以上・基礎疾患を有する人については軽症・無症状者も入院の対象としていたが、病床ひっ迫の状況を踏まえ、入院優先度判断スコアにより入院を判断すると発表。
イ)1月8日:積極的疫学調査を大幅に縮小し、重症化リスクの高い病院、高齢者施設以外は原則として行わないと発表。市中感染が蔓延し、経路不明が増加している事を理由とした。
ウ)1月18日:自宅療養中の患者が5000人を超え、職員らが行っていた健康観察はもはや不可能とし、患者本人の健康観察に切り替えると発表。パルスオキシメーターの貸し出しも40代以上に限定。
●県はことごとく基本的対応を自ら放棄したと言わざるを得ず、愕然(がくぜん)としたこの時期を思い出します。
ア)で入院者を選別。スコアに達しなければ、どんなに苦しくても入院はできません。これは身近にも経験しました。
イ)で感染対策の基本を放棄。特別委員会で私が、「積極的疫学調査を行わないのであれば、濃厚接触者にどのように注意や隔離を促すのか」と問うと、「陽性者本人が告知」と。実現が極めて困難です。
ウ)で自己責任の世界に放り出しました。しかも40歳未満は、パルスオキシメーターさえ貸し出されませんから、血中酸素濃度の測定もできません。
●報告者も「これまでの疫学調査は範囲が限定的という問題はありつつも、新たな感染者の補足という点で、数少ない手段の一つだった」との指摘を紹介。
また「疫学調査の放棄の代わりに、濃厚接触者にこだわらず検査を広げる訳でもなく、スクリーニング検査に力を入れる訳でもない。これでは、見かけ上の感染者数は減少しても、水面下で感染は拡大」と批判。
和歌山県知事の神奈川県に当てたメッセージも紹介。「コアな仕事だけは(中略)絶対に諦めてはいけません。諦めたといった瞬間に(中略)大崩壊を起こし」「苦しい事情は痛いほどわかりますが、それでもこの決定はいけないと思います」「和歌山という関西の田舎で全軍を上げて必死でコロナと闘っている我々からすると、前途に暗澹たるものを感じます」と。
このような状態を招いた問題として、医療体制整備が疎かになったこと、保健所支所化による弱体化を指摘しています。
そのうえで今後について、*短期には収束しない。*ワクチンだけでは克服できない *予防策の基本である感染源+経路遮断+感受性が必要としています。
●体制ではどうか
いつまでも応援体制では、本来業務が立ち行かない。
本年予算の特徴=不十分な人的体制及び問題点の検証が不十分。
また、先に指摘した医療体制・保健所体制とともに公衆衛生部門の弱体化などが指摘されています。
例えば、衛生研究所人員は2003年6月104名に対し、2020年5月は76名と28名の減となっています。とりわけ微生物部は24名から14名、地域調査部は38名から24名と大きく減らされています。
●健康医療局2020年度当初予算2024億300万円に対し、2021年度当初予算2958億7100万円。
2021年度「当初予算案の概要」によると、医療提供対策は9月までの分とされ、いずれ補正予算の編成は避けられません。
2020年度のコロナ対策の財源は国庫支出金で使途に縛りがあるため、PCR検査の積極的な拡大に対応できない、医療機関への損失補てんがないなどの限界を抱えていました。
2021年度も新型コロナ感染症対策関係で953億円の増額とされていますが、国庫支出金増額を922億円と見込んでいるので、ほぼ財源は国庫支出金という事になります。
2021年度もこのままでは、政府の枠内の対策にならざるを得ません。県費を積極的に活用した対策に踏み込むことが望まれます。
歳入・歳出の全体像をやはり追わなければなりませんが、次の機会に。今回は、とりあえずコロナ対策を中心としたここまでとしておきます。(2021.6.9)