●県庁近くにあるKAAT神奈川芸術劇場の視察を行いました。今回は特にコロナ感染症の広がりの中で、演劇を如何に展開するかという様々な取り組みに注目しました。
同劇場は4月・5月と休館し、県の施設休館の解除後、徐々に活動を再開しています。
休館中含め利用料金の返還は7月までで、5882万円に上っています。また講演の中止・延期は昨年度分11件、今年度分20件に及んでいます。劇団などには、時期を限定せず、準備分に対する補償を行っています。
また職員については、雇用を維持しています。
委託業者については、臨時休館に伴う業務見直しに伴う一部委託料減額を行っています。
●主な感染対策は以下の通り。
<換気>
大規模な換気システムが用いられています。また客席扉の解放を適宜行っています。
<消毒・清掃>
・アルコールを各所に配置。
・トイレには新たに液体せっけんを設置。
・階段手すり、エレベーターボタン、ドアノブ等の拭き取りを励行。
・入り口、楽屋口には、靴裏用消毒マットを使用。
・舞台関係機材については、取扱者を限定。
<検温>
入り口・楽屋口にサーモグラフィカメラを設置。発熱を検知した場合、改めて検温。
<距離の確保>
・座席は、前後左右一つ置きに使用。舞台前の列は使用しない。
・エレベーターは、靴型により位置指定。
・並んで待つ場面にも靴型により距離を確保。
・必要に応じアクリル板の設置。
・混雑回避のために、ホール・大スタジオ・中小スタジオなどの演目の開演時間をずらす。
<その他>
・神奈川県LINEコロナお知らせシステム登録、観客に来場記録登録を促す。
・ロビー・アトリウムなどにおいても飲食物の提供は当面行わない。
・クロークの営業は行わない。またオペラグラスなどの貸し出しを行わない。
・チケットのもぎりは、利用者にお願いする。
●以上は観客に関わるものですが、劇場従事者、また舞台関係者についても出勤前含め、考え得る対策は徹底しています。
例えば特有のものとして、出演者・スタッフ通じて体調不良者が出た場合のバックアップ体制の構築に努めています。
また舞台上はマスクの着用や、距離を確保することが不可能なこともありますから、体調管理と定期的な自費負担によるPCR検査を励行しています。
また舞台けいこを必要最小限とするためのスケジュール管理も行っています。
●これらの膨大な対策は、金銭的にも時間的にも大変な負担を伴いますが、これらの奮闘を支えているのは、「舞台芸術をコロナ禍の下でも途絶えさせない」との信念だと思います。この点は大いに共感します。
神奈川県の芸術に関わる施策は、時に知事の発言に振り回されるかのように見受けられる時もありますし、どれ程市民の利用を促すものになっているか、等検討すべきことは多々あると思っています。
この芸術劇場についても、設置から始まり、指定管理の状況なども検討されるべきと思いますが、舞台芸術をコロナ禍の下でどのように可能とするかという試みの途上にあります。
今回は劇団四季の公演により、再開の一歩を踏み出していますが、全ての劇団にこれほどの体力がある訳ではありません。劇場においても然りです。歩みを止めざるを得ない関係者も少なくないと思います。
それらの無念を刻みながら、また、それらの方も含め再び舞台芸術の主体者となり得る可能性をつなぐために、私たちも奮闘したいと思います。 (2020.8.14)