●3年前の11月14日、県庁近くの公園トイレで、37歳の県庁職員が自ら命を絶ちました。
2013年から知事室に配属となり、知事発案の「戦略的広報」やイベントなどの企画立案を担当。知事直結案件で、知事の気分にも左右されながら、上司からの厳しい叱責が続いたといいます。
知事室における精神的・肉体的疲労を抱えたまま、2016年には財政課に異動しますが、ここで担当したのは保健福祉局。この分野も知事肝いりの政策と密接に関連し、精神的な負担は大きかったと思われます。
●異動後間もない7月には、心身に明らかな異常が現れ、話すことも笑う事もなくなり、「死にたい」などの言葉が漏れるようになりました。亡くなる前の時間外労働は、7月201時間13分、8月185時間51分。9月135時間37分という異常さ。
●私には、このご苦労が想像つきます。住民の医療・保健・福祉の分野に無理やり「未病」の言葉を割り込ませるために、無駄なエネルギーとお金が費やされていたと思います。「住民の健康を願うなら、当たり前の保健・医療を手厚くすればいいのであって、未病の言葉のアピールのために、余計な手間と混乱を持ち込むことをやめよ」と私達は本会議でも委員会でも何度求めたことでしょうか。知事の政策のアピールの為に、職員が、知事と踊らされる場面などにも怒りを覚えたものです。
ここにパワハラ・長時間労働が加われば、どんなに辛い状況であったかと思います。
●更に怒りを覚えるのは、県がこの事件を県庁内にもひた隠しにしていた事です。今回の遺族の提訴で初めて彼の命が失われていたことを知ったと複数の方から聞きました。「訃報通知」さえなかったとショックを受けている方もいました。
私も3年前、今回のケースと思われる件で相談を受け、事態を明らかにしたいと思いましたが、当局は遺族の意向を盾に「事実の存否」さえ語りませんでした。
全てを闇にとどめようとした経過を見ていると、彼の死も「知事案件」だったのかといいたくもなります。
●お母さんが、県に1億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が、26日横浜地裁で行われました。
この日お母さんは、意見陳述で「親思いの子で県庁職員としてまじめに仕事をしてきましたが、知事室異動後状況が変わりました」「知事の特命で成果を上げない訳にはいかなかったのです。理不尽な叱責と長時間労働で心身をすり減らしました」と語ります。
「タオルに顔をうずめて押し殺すように泣いていた姿は忘れられません。最後の日の朝、虫が知らせたのか私が『ちゃんと帰ってくるのよ』というと、息子は答えず『いってきます』と出かけました」「県からは謝罪もなく、勝手に『遺族の意向』としてかん口令を敷きましたが、そんな意向を伝えたことはありません」「県の不誠実な態度に危機感を覚え、提訴しました。地獄のような苦しみを味わうのは、私で最後に」と訴えました。
私が思わず声を上げたのは、「知事に会ったとき、謝罪がないばかりか『一緒に写真を撮りましょう』と言われ驚きました」というくだり。知事の異様さが際立ちました。 働かせ方、死後の対応、そして請求棄却を求める答弁書を提出した今回の訴訟への対応、いずれも看過できません。(2019.12.26)