君嶋ちか子

きみしま 千佳子
神奈川18区から政治を変える
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神奈川18区女性・雇用相談室長前神奈川県議会議員
活動日誌

NEW!株主資本主義のいきつく先 |君嶋ちか子|神奈川18区|前県議会議員

2025年12月25日

☆今、もの言う株主(アクティビスト)の動きが活発化しています。それにより企業経営にどんな変化が起きているのか、労働者や消費者にどんな影響が生じているのか、を学ぶために、神奈川総研主催でセミナーを開催しました。

講師は赤旗記者の佐久間亮氏。氏は赤旗に連載された「資本主義の現在と未来」の取材を手掛けました。

<連載の動機> 

①「2015年を境に増え続ける自社株買いと株主配当」 ②「2015年を境に増え続けるアクティビストの株主提案」だったといいます。

①においては上場企業の株主配当が26年3月期には20兆円に迫る、自社株買いも2025年10月時点で15兆円に迫っていました。

②においては、2025年の株主総会では52社がアクティビストから137の株主提案を受けていました。(従来の最高は24年の46社、22年の132議案でした)

<社会の隅々で広がる株主資本主義>

・公的年金積立金の株式運用の拡大(2014年・2020年)

・10兆円の大学ファンドと国立大学改革(2022年・2023年)

・稼ぐ大学、稼ぐ公社、稼ぐ公園

<株式市場は本当に資金調達の場なのか>

・ウイリアムラゾニック「略奪される企業価値」

・「先進国の株式市場はわずかな資金供給しか行わず、むしろ配当と自社株買いによって企業から価値を抽出してきた」

<公的機関の市場投資が巨額の黒字>

・公的年金積立金の累積黒字180兆円

・日銀のETF(株式投資)の含み益46兆円

・第二次安倍政権以降に急増

<アクティビスト(もの言う株主)とはなにか>

*株主総会は、株式会社の最高意思決定機関

*株式の1%以上または300個以上(3万株)の議決権を半年以上保有していると、株主総会で議案を提案できる

<株式の保有者>

*民間:銀行・信託銀行・証券会社・保険会社・企業年金・ヘッジファンド・企業

*政府系:公的年金積立金・日銀・ゆうちょ銀行・自治体・外国政府

*個人:NISA2700万口座・iDeCo376万人

<アクティビストの提案>

翁百合(政府税制調査会会長)「アクティビストと言っても、投資先企業に対して短期的に配当金引き上げを迫り売り抜けようとするものもあれば、中期的に企業価値を引き上げようとする投資家もいる」

*ダルトン・インベストメンツ(米国)「中居問題でフジメディアHDに外部の専門家による委員会立ち上げと再発防止策・役員の入れ替えを提案」

<アクティビストの存在理由>

*会社や労働者、社会の事を考えているアクティビストは存在しない

*存在理由は企業の利益の収奪

*不祥事企業が標的になりやすい

*フジメディアの場合、ダルトンの一番の要求は不動産事業の分離

<アクティビストは株主還元の最大化を求める>

*株主提案された52社中32社が配当または自社株買いの提案

<株主還元とは>

*株主配当:保有する株式の数に応じて配るお金

*自社株買い:市場から自社の株を買い上げ、受給をひっ迫させ価格を吊り上げる

*株主優待:アクティビストは「株主にとってのリターンは株価と配当だけとし、割引券や招待券などの株主優待の廃止を提案

<アクティビストは設備投資に反対し、企業と経済の成長を阻害>

*ユタカフーズ:新工場建設により、低コスト高品質の安全供給を予定したが、「低配当性向により株主価値を棄損する」とのアクティビストの主張により建設を中止

*ワコム:投資計画に反対し自社株買いを提案

<アクティビストは敵対的買収防衛策に反対する>

*ライブドア事件(2005年)で、防衛策が普及

*機関投資家「経営者が自らの保身のために、株主にとって魅力的な買収提案を拒否する手段として買収防衛策が使われている」

日邦産業(自動車部品、名古屋市)の例

・グローバル・ESG・ストラテジー(GES;本社は英領グランドケイマン島)が2年連続で防衛策廃止を提案「買収防衛策の継続は、今や時代に逆行した方策であることは明白であり、市場からの規律をはたらかせる観点からも廃止すべき」

・会社は大幅な増配を提案するが、GESはさらなる増配を要求

日邦産業の反論

・大規模買い付け自体は否定しない

・大規模買い付け者の中には、短期的利益だけをめざし、企業価値を損なうものがいる

・金融商品取引法だけでは、不適切な大規模買い付けは防げない

・顧客に応じた商品開発のため、日邦産業は多くの顧客から機密情報を預かっている。情報流出の懸念が高まれば機密情報が引き揚げられ、競争力が低下する

<防衛策の基本は「素性を明らかにせよ」>

・買い付け者の氏名・住所・事業内容・役員の氏名及び職歴・買い付けの目的・買い付け後の経営方針・事業計画・資本政策・配当政策・利害関係者の処遇方針を示せ

・GESという社名は環境や社会に配慮する経営を意味する、それに照らしてどうなのか

東京コスモス電機(車載用電装品・座間市)の場合

・GESは2024年の株主総会で配当性向100%に相当する一株571円を要求

・「現経営陣の下で東京コスモス電機は縮小均衡に陥っている」「現経営陣は成長が鈍化していることに対しての危機感がない」「退陣すべきだ」

・株主総会でGES取締役の入れ替え提案が52%の賛成で可決

・GES代表の門田泰人氏が東京コスモス電機社長に

・「株価がとにかく『割安』だった」(東洋経済オンライン7月3日付)

旧経営陣の反論

・縮小均衡は言いがかり

・短期的な株価上昇をねらった経営戦略がとられる恐れが高い

・GESの興味関心は、会社の手元資金の事ばかり。事業計画や戦略なども示していない

・提案されている取り締まり候補者には製造業・自動車関連業界の経験者がいない

・門田氏の取締役就任は、インサイダー取引など利益相反の疑いが生じる

・門田氏の経歴に問題がある

<GESは株主と言えるのか>

・GES保有の40万株の内、8万株をフィリップ証券、16万株を立花証券の信用取引で取得

・取得費用24億円のうち17億円が信用取引

・株式数の6割、取得費の7割を両証券に依存

<アクティビストは株式持ち合いの解消を求める>

・株式持ち合いは一種の買収防衛策

<アクティビストは報酬見直しで企業経営者を共犯者にする>

・基本報酬

・年次インセンティブ(業績連動報酬)

・長期インセンティブ(株式報酬)

<アクティビストの主張>

・ダルトン「日本の取締役会の最大の弱点は、各取締役の株式保有の少なさと株主目線の欠如」「固定報酬の3倍程度の株式を保有すべき」

・ひびきパースアドバイザーズ(シンガポール)「取締役報酬の50%以上をROEや株主総利回り(TSR)に連動した株式報酬とすべき」「労働者にも株式報酬を導入すべき」

 TSR=(現在の株価+配当金)÷買った時の株価

・売上高1兆円以上企業のCEOの報酬の構成(アメリカ73%が長期インセンティブ)

<アクティビストは社外取締役の増員を求める>

・株式市場の専門家が必要

<アクティビスト活発化の背景>

〇2000年代初頭にもブーム

〇安倍政権下で息を吹き返す=アクティビストに武器となる政策

・2013年「日本再興戦略2013」企業との対話を投資家に促す

・2014年「日本再興戦略2014」日本企業のROEを世界水準に引き上げる

〇改革を支えるエージェンシー理論

・会社は株主のもの

・企業経営者は代理人(エージェント)に過ぎない

・暴走しがちな経営者をコーポレートガバナンスで縛る

・ROEや社外取締役の採用、買収防衛策の撤廃

〇経済産業省の手引き「『攻めの経営』を促す役員報酬」

・「業績連動報酬や株式報酬は、『企業の稼ぐ力』向上につなげる」

・「経営陣に株主目線での経営を促す」

〇金融庁も役員報酬とTSRの連動を好事例として紹介

・アクティビストは、経産省や金融庁の資料を錦の御旗としている

<変貌する日本経済>

〇間接金融から直接金融へ

・間接金融=メーンバンクから融資を受けて設備投資

・直接金融=株を発行して投資家(株式市場)から資金を調達

・非常事態に備えて内部留保が必要になる

・増税と社会保障改悪で消費と企業投資が低迷し、さらに内部留保が膨らむ

・アクティビストは株価が割安で、内部留保が豊富な企業を標的にする

<アクティビストの最大の武器ROE.>

・ROE=当期純利益÷自己資本

・ROEの数値が大きいほど効率的な経営と評価される。最低ラインは8%

<ROEは誰に必要とされたのか>

〇高株価を政権の支持基盤とした安倍政権

・NISA・iDeCoの普及で国民の多くが株主に

・NISAの利用率は20~30代で急上昇、若者の保守化にも影響

〇金融資本による産業資本支配の最新形態

・株主資本主義ではROEを梃子に産業資本の利益を吸い上げる

・経営者はモノづくりを軽視するようになる

〇機関投資家はROEなどに依拠し、議決権を行使

・ROEが3年連続で5%を下回ったら、代表取締役の再任に反対

・政策保有株(持ち合い株)が多すぎる場合は代表取締役の再任に反対

・社外取締役が取締役総数の3分の1未満なら全取締役の選任に反対

<株主資本主義が企業と社会を蝕む>

実例が続々と挙げられましたが、ここでは割愛します。

<株主資本主義が大学や保育にも>

・わずかに残っている経営者の誇りや技術を大切にする気概にさえ容赦なく鉈を振る株主資本主義、その魔手は大学や保育にも・・・・まさに強欲資本主義が襲い掛かっています。

☆ここに対抗する力が必要です。法的な規制とともに「モノ言う労働組合」が切望されます。また、公的領域を取り戻すことも必須です。NISAなどに頼らなくていい社会保障の確立も求められます。

資本主義はどこに行きつくのかと暗澹たる気持ちにもなりますが。その先を見通すことなしには、先々を語ることが困難です。(2025.12.7)

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