●「伊草さんを支援する会」総会と「職場復帰を祝う会」が開かれました。
2014年、NECディスプレイソリューションズに希望に燃えて就職した伊草さん。
しかし、その後宴会でのセクハラ問題などを経て、2015年12月18日勤務時間中に、4名がかりで手足を拘束され、宙づり状態で3階から1階玄関まで運ばれ職場退去させられるという信じがたい事態を迎えました。
伊草さんは「拉致事件での屈辱・恐怖・絶望感は生涯忘れることはない」と述べています。絶望の中で電機・情報ユニオンと巡り合います。
メンタル不調で休まざるを得なくなった時期を経て、復職可能の診断を得たにもかかわらず、会社は「発達障害」のレッテルを張り復職を認めず、2018年10月には休職期間満了として解雇を強行しました。
伊草さんは「こんな不当なことがまかり通るのは許せない」と2019年1月不当解雇撤回と慰謝料を求めて裁判に踏み切ります。
そして2021年12月23日、ついに横浜地裁から「解雇無効」との判決を引き出しました。職場復帰の条件を整えるための協議を重ね、ついに2023年3月26日、拉致事件から7年3か月ぶりに職場に戻りました。
●裁判闘争も大変な事ですが、裁判で勝っても、職場復帰に至るケースは多くはありません。また復帰しても実際は望まぬ仕事をさせられている、干されているなどの例もあり、スムーズに元の状態に戻るというのは容易なことではありません。
だから伊草さんが職場復帰を明確にかち取り、復帰後の労働条件についても一定明らかにしていることは、貴重な到達点です。
●この貴重な成果をなぜかち取ることができたか。(あくまでも私見ですが)
まずもって「こんな不当な扱いは許せない」と立ち上がった伊草さんの決意と奮闘です。
組合運動をやってきたわけでもなく、社内に問題解決につながる仲間がいたわけでもなく、僅かな期間の職場経験だけだった伊草さんにとって、この7年3カ月の闘いは不安の連続だったに違いありません。諦めることなく裁判にも踏み切った伊草さんの苦悩と力を改めて感じました。
第二に電機・情報ユニオンはじめ労働組合や支える会の支援です。
伊草さんが窮地に追い詰められて、様々な情報を探る中で電機・情報ユニオンに辿り着いたことは、決定的だったと思います。連帯する労働組合や地域の仲間、支える会などを中心とした宣伝行動・交渉・協議等、実に精力的に行われたと思います。たった一人の闘いもあり得ますが、闘いはやはり、仲間がいてこそ広がると思います。
第三に裁判を勝利に導いた弁護団だと思います。といっても裁判傍聴は一度しか行けず、裁判記録もじかに見ているわけではないので、「思います」にとどめていますが、鮮やかな判決から弁護団の活躍も見て取れます。
判決は「休職理由に含まれない事由を理由として」「休職期間満了による雇用契約の終了という法的効果を生じさせる」ことは許されないとし「原告を自然退職としたことは無効」「雇用契約上従業員としての地位を有すると認められる」としています。
●この日、職場復帰のその後の状況を聞きたかったのですが、残念ながら伊草さんの生の声を聴くタイミングは逸してしまいました。
伊草さんの最後の挨拶は、こみ上げるもの抑えながら語っているように見えましたが、こみ上げるものは喜びだけではないように思いました。大きな一歩を刻んだことは間違いないのですが、困難は続いていると思いますから。(2023.9.30)