3月10日、この任期最後の文教常任委員会が行われました。3日の議論を経て、この日は意見発表と採決。
●意見発表は以下の通りです。
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日本共産党神奈川県議団として、当委員会に付託された議案につきまして、定県第1号議案・定県第26号議案を除く各議案に賛成する立場から意見を述べます。
定県第1号議案「令和5年度神奈川県一般会計予算(当初予算)」につきましては、県立高校改革に伴う「再編・統合等の整備費」として、厚木東高等学校・厚木商業高等学校商業教育棟の新築工事費などが含まれていますので、反対いたします。
また定県第26号議案は、「神奈川県職員定数条例の一部を改正する条例」ですが、これにつきましても、県立高校改革に伴う再編整備による統合校の管理職の減が含まれていますので、反対いたします。
所管事項として取り上げた課題について要望を述べます。
1.教員の正規雇用をさらに増やすことについてです。
現在教員の働き方が過酷なことから教員志望の方が減少していることは確かですが、採用試験の応募者の絶対数が不足しているわけではありません。臨時的任用の対象とする名簿登載者の減少により欠員が生じている段階です。
現在県内で年度当初241名の未配置を発生させていることは、子供の学ぶ権利保障という点から、看過できない事態です。
私は、標準法から算出される定数は全て正規雇用とすることを求めていますが、最低でも未配置を生み出さない正規雇用を確保することを強く求めます。
2.教科担任制について
教科担任制を実施するための加配、新年度については42名の受け入れとのことですが、小学生段階では、専門的に深めるというよりは、総合的に学ぶ力を身に着けることが必要な段階といえます。その点から、教科担任制は、高学年に限定し、かつ準備や実技に特殊性が認められる場合に限ったものにするという一定の基準があるべきと考えます。今後について、メリットのみに引きずられた拡大とならないよう要望します。
3.医療的ケア児支援について
医療的ケアに当たる看護師72人の雇用形態は様々で、継続的に仕事に従事できる方は限られています。基本的に正規雇用で定数化することを要望します。
医療的ケアに当たる看護師は定員化されていないため、教員の定数を使わざるを得ないという問題が度々指摘されてきました。
これについては、今回看護師を標準法において定員化することを国に求めているという回答がありました。行き届いた医療的ケアが可能となるよう引き続き定員化の促進を要望します。
スクールバスによる構内の混雑については、各校の実態把握に努め、対応していただきたいと思います。
4.教育基本法14条第2項について
今回の特定政党の候補者と小学生の懇談については、問題はないとの教育委員会の認識はとても不十分で、今後に課題を残しました。
教育基本法14条第2項「学校は特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」は、テーマが政治的でなければいいというものではありません。少なくとも国会見学という授業の中で特定政党との接点を持つこと自体、特定政党に対する信頼や親和性につながりかねません。
また答弁の中にあった「現行の国会見学が議員の紹介を必要としているのでやむを得ない」との見解も問題です。衆議院のその仕組みは改める必要がありますが、現行の仕組みでも、紹介は国会見学についての手続き上の行為であり、その後の懇談などを予定しているものではありません。
今後、教育基本法14条の趣旨について、教育委員会においてさらに学校において政治の在り方や民主主義の観点を踏まえた徹底を求めます。
5.入学者選抜制度に関わる情報の共有について
入学者選抜制度の内容の問題点などはさておいたとしても、このような県民の関心が強くかつ当事者の人生を左右しかねない問題については、議論の過程をできるだけクリアにする必要があると思います。
その点から、「入学者選抜制度検討協議会」を設けた場合には、パブリックコメントにかけることが妥当です。少なくとも検討協議会を設けるほどの内容があるわけですから。
また、同様の理由から検討協議会の議事録もそのつど公開する必要があります。「議論が成熟するまで公開しない」などと言っているのでは、当事者含む県民の疑念を招くばかりです。
試験を受ける当事者を置き去りにして議論を進めるなど、大きな勘違いといわざるを得ません。
今後、公開・非公開の判断を検討協議会の判断に委ねるのではなく、公に責任を持つ教育委員会が公開を基本とする設置を進めるよう強く要望します。
以上、意見・要望を述べて議案に対する態度といたします。
●今回、教員定数増と授業のコマ数を減らす意見書案を提案していましたので、以下の提案説明も行いました。
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これまで、教育委員会として定数を増やす要望を文科省に出していることは承知しています。
今回議会からも意見書を挙げることを提案するのは、教員をめぐる状況がかつてなく深刻となっているからです。私自身も教員志望者から複数で教育現場の過酷さにより、希望を変更したという話を伺っています。実際教員志望者は減っています。
正規雇用の採用が不十分なことから生じている未配置だけではなく、その根はもっと深いところにあると思います。授業のコマ数が増加し困難な状態が恒常化しており、さらに英語や道徳が教科として導入され、ICTへの対応も求められる、このような新規業務も追い打ちをかけ、疾病や・現職死亡・途中退職などが生じています。
このまま放置すると、人が集まらない、だから忙しさに拍車がかかるという悪循環に陥りかねません。
そうさせないために、授業のコマ数を減らす、それを可能とする教員の定数を増やすという環境改善を今大胆に行わなければ、教育現場はなり立たなくなるのではないかと危惧しています。
是非委員会の皆さんのご賛同をお願いいたします。
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残念ながらこの意見書案は、全ての会派から「賛同できません」の態度が示され、委員会提案とすることはできませんでした。(2023.3.10)