●大船フラワーセンターを訪れました。ここはかつて「神奈川県立フラワーセンター大船植物園」でしたが、2018年4月1から指定管理者制度の導入とともに、ネーミングライツにより、通称「日比谷花壇大船フラワーセンター」に。
指定管理者制度による変貌を確認するのが目的。大山議員、大船フラワーセンターを幾度となく訪れている後藤仁敏鶴見大学名誉教授、「大船植物園の存続を求める会」の方々と一緒でした。
●大きく変わったことの一つは、池が埋められコンクリートで固められたこと。池にはハスが見事に生存していたのですが、今、ハスの一部がカメに浮かべられ、コンクリートの上に並べられています。なぜこんな不自然な形にしたのでしょう。池の維持経費削減でしょうか。
大きな池に水が湛えられていたら、ハスはより見事に、来園者もより大きな潤いを感じる事ができたでしょう。この写真のところは全部池でした。
●更に大きく変わったのは、温室が単なるガラスの建物になった事です。重油代の削減でしょう(因みに当時の資料によると温室の維持管理費は年間約1500万円)。これによって熱帯・亜熱帯の植物は、駆逐されてしまいました。
8億2千万円をかけて作った温室は、採光、風通しに配慮したドーナツ型の素敵な造りでしたが、単なる展示室になり果てました。
おまけに、水生植物などがあった池部分もコンクリートで埋められ、鉢植えに植物がポツンポツンと置かれ、「なんで埋めちゃうの? 何この無意味な空間は?」という感じ。写真は以前水がたたえられていたところ。
●悲しくなるのは、これですみませんでした。入り口から西奥に進むと苗圃があります。この苗圃があった場所も売却されマンションに変わっていました。それだけではなく、その手前の大木や竹林が大量に伐採され、マンションが迫ってくるかのようでした。
苗圃を売却したとしても、その手前の樹木伐採の理由が全くわかりません。マンションの住民から見ても、園内の来訪者から見ても、樹木に囲まれた方が、ずっと気持ちがいいのに。
●主な変化を書き出しましたが、このような変化がなぜ起きているのか。
黒岩知事の「緊急財政対策」により2012年、移譲を含めた検討対象となります。農政課の資料によると、2013年度年間約2億4千万円の支出超過。
でも、移譲については、鎌倉市、日本大学、某医療法人、名古屋港のフラワーガーデン、伊豆サボテン公園、足利フラワーパーク、日本電波塔(株)と次々と断られます。
その中で、2014年には「大船植物園の存続を求める会」が結成され、議会に署名や陳情が提出されています。これらを経て県立施設として存続させることが決まります。
しかしながら緊急財政対策本部は、「サービスの向上、効率的・効果的な管理運営が図られるよう指定管理者制度の導入が望ましい」と結論付けます。共産党は直営を主張。
2013年当時、経費は2億8千万円(人件費約2億1千万円・維持管理経費7千万円)。
●私はしつこく調べました。「神奈川県立フラワーセンター大船植物園指定管理者 外部評価委員会評価報告書」で「適切な積算がされており、最も経費の節減を図っており十分に評価することができる」とされた現在の指定管理者(アメニス大船フラワーセンターグループ)の提案は、「2018年度の経費1億251万8千円と見込み、年ごとに削減を続け2022年度には9千266万円」というもの。県の経費2億8千万に比べて、大変な縮減です。年々経費削減を続けるという事がなぜ可能となるのでしょうか。
●指定管理者制度の常ですが、「コスト削減」と「サービスの向上」という二つの矛盾したテーマを押し付けられ、しわ寄せは働く人に集中しますが、削減を続けるならばいずれ「サービスの向上」も不可能となります。
大船フラワーセンターの埋められた池、暖房を止められた温室はその哀しい象徴です。
国公立植物園の定義は、社団法人日本植物園協会によると「植物を収集・保存・展示し、花と緑による市民の憩いの場とするとともに、植物の調査・研究を行って、植物・園芸についての知識の普及や社会教育、環境保全や自然保護を推進する施設」です。
この役割を担い、神奈川県唯一の植物園として50年以上にわたり県民に親しまれてきた大船植物園を、支出超過を理由として切り捨てた黒岩「緊急財政対策」の野蛮さを改めて見せつけられました。(2021.5.26)