●白石孝氏(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長)を招いての、NPOかながわ総研セミナーは示唆に富んでいました。
●最初に、韓国に関わる印象的な指摘を以下に。
▼現在の韓国を把握するには、経済・産業政策、とりわけ1997年以降の雇用・労働政策と社会保障政策が重要。
▼現在の日本社会は、政治と報道が大きくゆがんだ状態。韓国に対する主体的な判断が損なわれたまま嫌韓・嫌中に舵を切っている。(日本政府が歴史的事実と異なる徴用工問題を意図的に流す、防衛・軍事実務レベルのレーダー問題を政治課題に浮上させる。マスコミは、独自調査抜きに政府報道を流すのみ)
▼日韓の分岐はどこから始まったか。1980年代、韓国は光州民衆抗争から民主化に大きく進み、一方で日本は臨調・行革、社会党・総評の解体から90年代の新自由主義へ。
●キャンドル市民革命とムン・ジェイン政権についての指摘も。
▼集会は、2016年11月~17年3月で毎週土曜日に延べ1700万人(国民の32%)が参加。韓国では100万人規模の行動は、それまでも何度も。
▼政権には、ソウル市関係者・社会運動活動家・専門家・弁護士が多数。
▼政権は、反緊縮・福祉国家志向を明確に。
<所得主導成長論>所得不平等と需要不足を正す
<雇用政策は>最賃引き上げ・雇用拡大・非正規職縮小・法定労働時間短縮・公共部門雇用拡大(雇用の呼び水として公共部門で81万人の雇用創出)・労使政委員会設置
<福祉政策では>現金給付拡大・公共福祉拡充・年金拡充・国公立保育所・幼稚園・療養施設・賃貸住宅・病院の拡充
●核心のソウル市政の特徴を以下に。
▼野党統一候補の弁護士パク・ウォンスン氏がソウル市長に就任(2011年10月)。
▼三大公約
1.小中学校給食の完全無償化
2.ソウル市立大学の授業料半減
3.公共部門非正規労働者の正規化
▼五大市政目標
1.堂々と享受できる福祉
2.共に豊かになる経済
3.共に創造する文化
4.安全で持続可能な都市
5.市民主体の市政
▼主要政策
<労働政策>非正規職の正規化・業務委託を直営に戻す・正規職雇用拡大・生活賃金拡大適用・労働時間短縮 など
<福祉政策>社会福祉予算を30%に拡大
<公共住宅政策>住宅への不安を解消
<女性に希望を与える都市>公的保育サービスの拡充、社会参加の機会の拡大
<教育政策>学校給食無料化、大学生の学費・生活費負担の緩和
<公共医療の強化>都市保健施設の拡充(52ヶ所→73ヶ所)、阻害階層への医療サービスの拡充
<若年者の創業支援>
●見事なほどに、ムン・ジェイン政権の政策もソウル市長の政策も、日本が進めてきた方向とは真逆です。小さな政府をめざし、民営化や規制緩和を続けてきた日本政府や神奈川県。
それに対し、韓国が進めている、非正規の正規化、業務委託の直営化、公共部門の雇用拡大などは感動ものです!私達が、日本の流れに抗して度々訴えてきた内容です!
これらの政策の成果を体系的に整理し、政策評価を確立させたいものです。
●キャンドルデモで示したソウル市長の配慮(地下鉄やバスを夜明けまで走らせる、集会場所の確保など)もむべなるかなと思いました。
こういう人を市長に選ぶ市民にも、心から敬意を表したいと思いました。
キャンドルデモの衝撃、韓国映画タクシー運転手などで得た感動、今回の講演等々、韓国に対する興味と学ぶ対象は尽きません。
「ソウルの市民民主主義―日本の政治を変えるために」も早く読まなければ。(2019.2.18)