●「かなで」はこの施設の愛称で、音楽を奏で響き合うをイメージしています。情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)として、中原区井田に造られました。市の事業として社会福祉法人が運営し、運営費は国と市が負担しています。
発達障害や虐待の結果、家庭や学校で周囲とうまく適合していけない子どもたちを対象とし、入所・通所・外来相談ができます。
総合環境療法を用い、生活・医療・心理・教育が連携しています。
入所定員40名、通所定員は10名です。
●怖い思いをしないで済む、見通しの立つ生活を保障することが治療の第一歩です。お風呂に入ることや寝ることが怖い子が少なからずいるといいます。そこが虐待の場となることが多かったからです。
大切にされた経験が乏しい子どもたちに、自己肯定感を持つことや自己決定が可能なことを実感してもらうことをめざしています。主体性を育む為には「安心できる生活を保障し、選択肢を多く揃えることが必要」と施設長は言います。
ついで、孤立しがちで人との関わりが苦手な子どもたちに、人の中で生きていく力をつけることを目指しています。共同で行う経験、人に頼る経験を学びます。
これらを前提としながら、治療的生活支援・治療的教育・心理的治療・精神科治療が行われています。家族との関係づくりも不可欠です。家族もまた様々な困難を抱えていることが多いといいます。
●1階には学校と児童精神科診療所があります。
井田小学校・井田中学校の分教室として、少人数で授業が子どもたちのペースを尊重しながら行われていました。出席についても子どもの選択が基本です。
2階は居住棟。女子ユニットと男子ユニットに分かれ、それぞれの居室とともに広い食堂スペースが用意されています。
軽減授業を受け終わった小学生が、遊びながら元気に、私たちに声をかけてきました。
3階は2017年度開設予定の幼児ユニット・高校生ユニットが用意されていました。それぞれ、気持ちよく過ごせる工夫がされています。
●市が熱意を持って進めている事業に敬意を表し目を見張りつつ、これらの施設を必要とする社会(発達障害等は別として)に胸が痛みます。
虐待等の結果として、ここで生活する子どもたちについては、貧困を初めとする虐待等を生み出す社会的要因を取り除かなければと痛感します。
ちなみに神奈川県は、職員研修の補助、これらの事業を行う県と基礎自治体の協議会を取りまとめるという点で一定の役割を果たしています。(2016.11.16)