●前回ブログの続きです。神奈川軍需産業研究会の学習会二人目の報告は、村上研一中央大学教授による「米中対立、『防衛産業の多国籍化』と日本産業」です。以下に。
【中国産業の躍進】
- 1)海洋エンジニアリング・ハイテク造船
*英クラークソン・リサーチ社2024年船舶建造量:中国2,231万トン 韓国1,150万トン 日本493万トン 欧州195万トン
*「ルビオ報告」中国の造船能力は米国の200倍
- 2)航空・宇宙設備
*22年宇宙ステーション「天宮」完成、有人宇宙ステーションを有する唯一の国に。
*「ルビオ報告」米国で使われている商用ドローンの9割が中国製
- 3)半導体など次世代情報通信技術
*中国政府、国内サプライチェーンの構築支援策強化
*民営企業ファーウェイ:100%出資子会社のハップル投資を通じて関連メーカーに出資
*バイデン政権時先端半導体向け微細加工装置の中国への全面禁輸を行ったが、米国「戦略国際問題研究所」報告書:「対中半導体封じ込め策は中国の技術力を低下させることに失敗した」
- 4)省エネ・新エネ自動車
*2024年10-12月期新車販売に占めるEV構成比:世界15% 欧州19% 米国8% 日本1% 中国25%
*車載電池:中国上位3社計で世界シェア6割
- 5)先端的鉄道技術
*中国中車集団(鉄道車両で世界最大手):最高時速600Kmリニアモーターカー開発
- 6)新素材
*レアアース:採掘シェア7割、精練・加工シェア9割が中国。米国輸入の7割が中国製
*環境規制が緩かった中国で、採掘・精錬企業が競争力を獲得し、米国のレアアース鉱山は廃止。
- 7)電力設備
*24年太陽光パネル生産国別シェア:中国83%
*24年風力発電機世界シェア中国メーカー6社合計:世界シェア63%
- 8)バイオ医薬
*米国処方医薬品:約3割が中国製
*米国消費抗生物質原材料:50%が中国製
【米中対立と「グローバリゼーションからの転換」】
- 1)第一次トランプ政権と「グローバリゼーションからの転換」
*18年11月米国議会超党派諮問機関「米中経済安全保障再興委員会」報告書:「覇権をめざす中国の試みは米国の安全保障や経済的利益に疑いようのないリスクになる」
- 2)バイデン政権による対中封じ込め
*対中封じ込め強化:22年8月半導体投資企業への補助企業は10年間中国投資禁止、22年10月先端半導体の製造装置・素材禁輸、米国人の中国就労禁輸
- 3)第二次トランプ政権と米中「関税戦争」
*25年4月米が関税54%(一律関税20%・相互関税34%)→報復経て米145%・中125% →5月トランプ政権関税30%に引き下げ
【日米軍事産業一体化と日本産業】
- 1)経済安全保障政策と日米軍事・経済一体化
*22年1月日米首脳会談において、「日米経済政策協議委員会」(「経済版2+2」)を設置
*23年11月第2回会合共同宣言:個別分野ごとに共同研究・開発する日米政府機関を特定:最先端半導体技術センター(日)と国立半導体技術センター(米)における半導体・人工知能・バイオテクノロジー・次世代通信技術・サイバーセキュリティ等々
*コルビー国防次官:防衛産業の多国籍化、同盟国(特に日韓)を巻き込んで、防衛産業の基盤強化を図る
- 2)鉄鋼―日本製鉄によるUSスチール買収
*23年12月日本製鉄がUSスチール買収を表明 →25年1月バイデン政権が中止命令 →トランプ政権買収を容認
*船舶・軍用車両には高炉製鉄が不可欠だが、米高炉メーカーは2社のみ
*日鉄の橋本会長「中国対抗の観点で製造業復活を目指す米政府と目的が合致」
*日本製鉄の最先端製造技術を投入し、米国の輸入依存の高級鋼生産へ
(米国政府が持つ黄金株によって、米国生産の縮小が難しいため、過剰生産が生じた場合には日本国内の統廃合が優先され、産業空洞化の恐れも)
- 3)造船―日韓造船産業の対米協力
*トランプ政権は日韓政府・企業に、軍民両用船の開発・製造について協力要請
*韓国企業現代グループ:米海軍の艦艇整備協約を締結
- 4)半導体
*21年2月日米首脳会談で「日米は半導体含む機微なサプライチェーンで連携」との共同宣言
*生産拠点整備支援予算 →TSMC熊本第1・第2工場に約1.2兆円、ラピダスに1兆7225億円など
*ラピダスは汎用品の大量生産ではなく、軍需含む特注品多品種少量生産を位置づけ、米国防衛産業での使用も視野に開発
- 5)日本の防衛関連産業
*防衛関係費:13年度4.9兆円、22年度5.8兆円、安保3文書→23年度7.6兆円、24年度8.8兆円、25年度当初予算8.7兆円
*三菱重工:26年3月期航空・防衛等の売り上げ収益は前年比31%増の1.35兆円
*装備品輸出:従来は部品のみであったが、25年8月には三菱重工製「もがみ」型護衛艦が、オーストラリア海軍のフリゲート艦に採用され、エンジンは川崎重工、アンテナはNECが生産(23年12月の岸田政権による「防衛装備品移転三原則」緩和が寄与)
【おわりに】
「防衛産業の多国籍化」によって日本産業復活はあり得るか
*鉄鋼:USスチール買収するも黄金株 →日本技術の対米移転のみ=産業空洞化
*造船:西海岸への投資に日本メーカー躊躇、米国人件費高騰、日本の人材不足
*軍需:米国の下請け・非量産、日本政府の防衛予算拡大・利益率保証への寄生
*半導体:ラピダスは販路確保困難、軍需中心で量産ではなく利益出にくい、しかも日米協定で技術非公開なので転用しにくい
◆いずれも量産品輸出による貿易黒字支えは困難、再エネ危機は衰退、自動車も先行き不明、IT赤字
◆そもそも軍需産業は「奢侈品(しゃしひん)」(消費財でも生産財でもない)生産 →成長への波及乏しい
●中国の実力には圧倒され、日米政府と一体となった日本の軍需産業の現状には暗澹たる気持ちになりました。今後戦争で儲かる産業と国になると考えるとゾッとします。
かつ、この方向では未来は切り拓けないとの指摘 … やはり産業は他の活路を見出さなければ。(2026.3.21)


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