▲南武線が3月15日から車掌乗務が廃止されワンマン運転となっています。この見直し求める取り組みが始まり、4月5日にスタート集会が行われました。
「ワンマン運転に見るJRの経営姿勢と私たちの暮らし」と題する講演は、上岡直美さん(環境経済研究所代表・交通権学会所属)です。ポイントを紹介します。
▲南武線の混雑率は、ピーク時は山手線を上回ります。
線 名 | 区 間 | 時 間 帯 | 本数 | 輸送人員(人) | 混雑率% |
山手線 | 新大久保~新宿 | 7:41~8:41 | 20 | 42,500 | 131 |
南武線 | 武蔵中原~武蔵小杉 | 7:30~8:30 | 24 | 31,110 | 146 |
▲JR東日本、ワンマン運転の概況
【2025年3月以前】
66線区注46線区で実施(部分実施含む):無人駅での運賃収受は大きな負担
【2025年3月以降】常磐線・南武線
【2025~2030年予定】山手線・京浜東北線・根岸線・横浜線
▲ドアの開閉
・運転士がモニターを見ながらタッチパネル操作。
・「反応が遅い」「手元が見えづらい」など誤操作に繋がるとの指摘あり。操作用のシステムではなく、コストをかけないために表示システムを転用したものであるため誤操作が起き易い。
▲民営化時の約束
・全国画一からローカル優先のサービスに徹します。
・明るく親切な窓口に変身します。
・楽しい旅行を次々と企画します。
・会社間をまたがっても乗り換えもなく不便になりません。運賃も高くなりません。
・ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。
・ローカル線(特定地方交通線以外)もなくなりません。
▲実際は
・信越地区の自治体からの増結要望に対し「列車が混雑していないと本社に申し訳が立たない」と拒否。
・日光線2022年3月、朝の通勤・通学の時間帯上り列車3本から2本に4両編成から3両に削減。苦情には「詰めて乗るように」「乗れないほど混んではいない」と。
・2015年ブルートレイン全廃。
・ローカル線の廃止も。
▲「親方日の丸」から「親方株主へ」
JR四社の法人株主比率は他の民間鉄道より高い。株主の方を見ながらの経営となっている。
▲人員構成
・JR発足に比し、JR東日本の職員数は約3分の1に。
・神奈川新聞2017年調査では、JR東日本・JR東海の249駅431本のホームにおいて、駅員が常駐(社員もしくは委託)するのは65本のみ。
現在は無人化がさらに拡大。
・輸送人員100万人当たりの鉄道職員数、フランス200人、イタリア190人、ドイツ150弱に対し、日本は10人。
▲資源配分の歪み
国の交通政策の歪み是正が必要。
バス運転士不足が問題となっているが、その要因は技能や労力に見合わない低報酬。全国のバス運転士の給与を2倍にするには、年間で道路事業の5キロメートル分の財源を回せば可能。(鉄道についても同様の位置づけが必要)
▲安全の状況
・「鉄道運転事故」=列車火災・列車脱線・列車衝突
運転事故は頻繁に起きる訳ではないが・・
・「輸送障害事故」=運休または30分以上の遅延を生じたもの
この遅延の範囲は当初10分以上を民営化時に60分以上に変更。民営化で輸送障害事故激減の印象操作に一役。
・ある線の車内アナウンス「・・・車掌は乗務しておりませんので、車内で気がかりなことがあったら運転士にお伝えください」
運転中にトラブルがあったら、運転しながらどんな対応が可能なのか。(いやー恐ろしい)
▲無人化で発生する新たなバリア
「ご利用のお客様はインターホンでご連絡ください」との掲示に聴覚障がいの人は立ち往生。視覚障がいの人は掲示がそもそも見えない。
▲海外の例
・ルクセンブルクは国内全公共交通無料。
・ドイツ全土の鉄道が3カ月限定だが、1カ月乗り放題。
・逆行するアメリカ。補助金なども出しながら、自動車から公共交通への流れを進めてきたが、トランプ就任で逆転。気候変動関連・交通政策・交通安全・地域政策などに関わる研究機関も廃止の危険性あり。
▲日本の無料化の取り組み
・札幌市交通局、路面電車無料デー。
・静鉄、CO2排出抑制めざし、公共交通に乗るきっかけづくりのアクション。
・長崎電気鉄道等5社、物価高騰対策・公共交通の需要掘り起こしを目的とし運賃補填分補助。
▲交通は人権
「基本的人権」のほとんどが「交通の自由」がなければ実態を失う。(私たちの願いに確信を持ちました) (2025.4.5)