●1日の能登半島地震とともに、2日の羽田空港における日本航空機と海上保安庁航空機の衝突・炎上事故は、大きな衝撃を日本中に及ぼしました。
一昨年からロシアとウクライナの戦争、イスラエルによるガザへの攻撃に傷つけられ、国内的には物価高をはじめとして、実質賃金が上がらず、日本産業の低迷が続き、悪政に倦んでいるところに、自民党の底なしの不正会計や企業献金まみれがとどめを刺したといった状態でした。
そこに、お正月早々の二つの出来事。
「多くの人が打ちのめされた」といっても過言ではないと思います。
●公表された管制の交信記録によると、2日午後5時45分海保機からの呼びかけに対し、管制官は「C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」と応じています。しかしながら「滑走路停止位置C5に向かいます」と復唱した海保機は、停止位置を超え滑走路に侵入、日航機と衝突するまでの40秒間滑走路上にとどまっていました。
日本航空の聞き取り調査で、日航機の機長は「(海保機を)視認できなかった」と述べ、海保機機長も「いきなり(機体の)後ろが燃えた」と警視庁の任意聴取に答えており、互いに相手の存在を認識していなかった可能性が大です。
また管制官と日航機が、着陸やり直しの交信を行っていなかったことも明らかになっています。通常は、滑走路上に別の飛行機がいて着陸の妨げになる場合は、管制官が再指示を出すといいます。
ここまでは記録や聞き取りから公表されていますが、未だ調査中であり全体像は明らかになっていません。
●事故のニュース時、私の頭にとっさに浮かんだのは、航空管制官の削減と羽田空港の過密状態です。
管制官は、空港レーダー室業務だけではなく、日本の航空交通全般にわたって「空の安全」を守っています。
ところが、2003年に4,961人だった管制官定員数は、2023年4,134人と19年間で827人(17%)の減です。
一方日本の空を飛ぶ飛行機の数は、2004年には年間463万1千機だったものがコロナ前の2019年には695万3千機と、232万2千機増で1.5倍となっています。
この結果、1人の管制官の取り扱い機数は2004年に年間933機、2019年には1,682機と実に1.8倍に跳ね上がりました。(国交省HP「管制取扱機数と定員の推移」より)
しかもこの数字は定員数です、実際には定員を満たしていないことも多く、負担はより大きくなっていると思います。公務員だった私は本当に胸が痛みます。
国土交通労働組合は「相次ぐ定員削減により災害の対応が困難になったり、公共交通機関の事故トラブルの恐れが高まったりして、国民の安全や生活が危ぶまれる状況になっています」と訴えています。
●この裏で進行している一つとして、国交省は、2020年3月29日から増便を強行。東京オリンピック含めた外国人旅客4千万人を目標として、羽田空港の国際線を一日80便から130便に増やしました。
そのために新ルートが設置され、離陸直後は川崎臨海部の石油化学コンビナート上空、着陸時には新宿・渋谷・品川などの都心上空を、山手線並みの頻度で低空飛行という事態になっています。(県議として当時、この危険な新ルートの撤回を求めました)
今回事故が起きたC滑走路も、新飛行ルートに伴って運用開始となりました。
今回の事故原因の全容はまだわかりませんが、この危険な状態は、経済至上主義(観光戦略、公務員の削減等)の下で続いています。命に関わる問題として、見直しが必至です。(2024.1.10)