君嶋ちか子

きみしま 千佳子
神奈川18区から政治を変える
働く場と学ぶ場に希望を!
神奈川18区女性・雇用相談室長前神奈川県議会議員
活動日誌

セクシュアル・ハラスメントを生み出す社会的構造、そして現在の困難を超えるために |君嶋ちか子|神奈川県会議員

2021年12月10日

●「働く女性の神奈川県集会」に参加。今年も色んな声が詰まっていました。医労連の「ハラスメントの実態報告」、電機情報ユニオンの「三菱電機で働く女性労働者の監禁部屋・追い出し部屋」の報告等々。

ここでは、弁護士角田由紀子さんによる記念講演「ハラスメントは人権侵害」の紹介を。

●セクシュアル・ハラスメント認識の歴史

*多くの女性労働者に起きているのに、声高に語られることはなかった。何故ならそれは女性の落度であり「被害者責任論」に転嫁させられてきたから。

被害女性に許された唯一の対応は、告発せずに職場を去ること。

今ようやく、辞めた後で法的解決を求める人が増えている。「在職中に雇用を守りながら法的手続きを取れる人は少ない」に、改めて残念な納得。

1989年の福岡事件は、セクハラを理由にした最初の提訴。1992年判決では、使用者の責任も認めたことで、加害者個人と使用者の両方に責任があるとの社会的認識が高まった。

*言葉としてのセクハラは普及したが、根本的原因に切り込んだ対応にはなっていない。セクハラには法的定義が無いから。

例えば、均等法11条は「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等」は、定義規定ではなく、雇用管理上の措置等を定めるものに過ぎない。しかも11条は、性差別とは別扱い。性差別を規定する募集・採用時の差別などは別条。

よって均等法は、セクハラ根絶の力にはならない。

●日本のセクシュアル・ハラスメントを生み出す社会構造

*セクハラに象徴される女性に対する暴力は、自然現象ではない。戦争の影響や家父長制の下での暴力。セクハラの多くは年長の男性が加害者。

「女性が個人として尊重されていない社会では、女性は容易に暴力のターゲットにされる」

*2020年、日本のジェンダーギャップ指数、政治面は144位、経済面では115位。正社員で働いても生涯賃金で男性と1億円の差。非正規労働者の7割近くが女性。

「男性は家族を扶養する義務があり、女性は夫に庇護される存在だから、低賃金や性別役割分担に忠実な働き方が肯定される。

*刑法改正論議の中でも、セクハラの理解は不十分。大人だから「イヤ」といえるはず論に終始。だが実態として、男女間は権力関係にある。

2019年、セクシュアル・ハラスメント禁止法が成立しなかったのも実態への理解が不十分だったため。

DV防止法の基本構造は、被害者が全てを捨てて逃げて初めて救済される保護命令の構造。加害者は失うものが無い。

安保法制は、暴力に親和的な変化を生み、DV被害者は増加。コロナ禍はそれに拍車をかけた。

●日本のセクシュアル・ハラスメントへの法的対応の不十分さ

現在法的対応は、民法不法行為方が中心。だがこの法律は、経済活動などの金銭解決が可能な事案への適用を想定。

被害者が求めるものは、ハラスメントを止めてほしい、職場で安全に働きたい、という事。損害賠償金が欲しいからではない。

元々対等でないところに被害が起きているのに、民事裁判(対等な当事者間のトラブルを想定)手続きで突然対等とされる矛盾。

ILO190号条約の批准が必須

批准の条件は、制裁付きの禁止法が制定されていること。よって日本の現状では批准できない。

190号条約は、国際的に最高水準のハラスメント対応法。適用範囲が広く、法的救済は殆どカバーできる。

第2条の適用範囲は、労働者、雇用修了者、求職者、ボランティアなど。官民を問わずすべての分野に適用。

第3条においては、職場・休憩室・更衣室・業務関連の外出・使用者提供の居住設備・通勤時などを適用範囲としている。

批准の前提である国内法制定のとりくみを!(因みに、女性差別撤廃条約は、国連での採択から批准まで6年。批准を求める運動の過程で均等法ができた)

●駆け足で、セクシュアル・ハラスメント認識の歴史をたどり、それを生み出す社会的構造を探り、法的不十分さを一定理解しました。そしてILO190号条約の批准の意義も。

セクハラをめぐる闘いは、セクハラと認識されるまでに大変な辛酸をなめ、それ以降も不十分な法の下で悪戦苦闘してきた歴史でもあったわけですね。日本的特色も加わり、辛い経験が続いています。

全ての性が人間的に解放される社会をめざしたいと改めて。(2021.12.5)

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