●デジタル化の意味するもの、特に今回は働き方への影響を取り上げる学習会に参加しました。労働組合からの報告もありましたが、長くなるのでそのお二人は「その2」に委ね、今回は桜美林大学教授の藤田実さんのお話しに限って。
●「デジタル・AI革命の歴史的意義と資本主義的充用」と題したお話です。
<AIの定義>
*「人工的に作られた人間のような知能」「気付くことができるコンピュータ」つまり、データの中から、特徴量を生成し現象をモデル化。
*人間が行なっている知覚や知性を、コンピュータと半導体技術によって実現。
<AIとコンピュータ>
従来のコンピュータと異なるのは、ディープラーニングの機能を持つこと。従来の機械学習は、特徴量をあらかじめ指定し、そこから推論していくが、ディープラーニングは自動的に特徴量を決め推論していくことが可能。
<AI革命の基本的性格>
*導入例
・自動運転技術
・自然言語で会話するチャットボット
・営業やマーケティングンの顧客分析 等
*AI革命における自動化・省力化は、ICT革命などと何が違うか
・従来の自動化は、あらかじめプログラミングされた手順に従い行われる。
・AI搭載機器では、センサーで画像認識しながら必要とする作業を柔軟に行う。
<生産力基盤の変化>
*機械制大工業の発展(18~19世紀の繊維産業、20世紀の重化学工業)
*オートメーションとコンピュータ制御の発展(原子力、航空宇宙、エレクトロニクスなど)
*AI技術の発展とAIネットワーク化(AI装備の家電品や車など製品にとどまらず、生産過程でAIによる機械制御を行う)
<AI革命の可能性と資本主義的充用>
*AI革命により、生産の無政府性が克服され、新しい社会主義社会形成の可能性も。
*AIネットワーク型生産システムが成立すると、個別資本の生産計画を超えた高度な需要予測に基づく生産が可能となる。
*労働の人間化と労働時間の短縮による自由の領域の拡大(ほぼ無人化された工場、生産性向上による巨大な富の産出)
*AIは雇用吸収力が少ない。(旧東芝メモリの四日市工場では、ラインに1-2名)
*知的労働の一部も代替(広告や新聞記事など自動文章作成可)
*AI化でも必要とされる労働(アルゴリズム作成、本質的課題の発見、解決策の策定、セキュリティスペシャリストなど)
<解雇自由の世界へ>
*AI化の下では、配置転換が困難で大規模なミスマッチが発生。
*ジョブ型雇用への転換(ジョブが無くなれば、企業は労働者を解雇)
●AIの全体像は把握できたものの、聞きながら私は疑問が次々と。
★AI「革命」といい得るのか? ⇒藤田さんは、生産基盤が大きく変わる可能性があるので「革命」というべきと。
★「新しい社会主義社会」との規定も飛躍し過ぎなのでは?
★「労働の人間化と労働時間の短縮」との指摘もありましたが、AIの下では、人間的と思われる仕事もとって代わられており、とても「労働の人間化」といえる状態ではないのでは? また機械化が即、労働時間短縮につながらないのは、資本主義の歴史が示しているところでは?
★「AI技術は、人間の行動や思考を拡大する役割」とも言っていましたが、それよりは、人間をはじき出し成り代わっている側面が大きいのでは?
等々、質問は最初の「革命」しかできず疑問は残りました。
でも最後に、藤田さんは、「資本主義社会では失業とミスマッチの増大、解雇自由の世界をつくり出しかねない」とも言っているので、上記の指摘は、正しく運用されれば、という但し書き付きで考えるべきなのかもしれませんね。是非、続編で深めたいものです。
●この学習会の後半、「労働組合からの報告」も明日是非ご覧ください。こちらは現実感覚で、とらえることができるはず。(2021.3.13)