●藤田実桜美林大学教授による「デジタル・AI革命の歴史的意義と資本主義的充用」に続き、電機情報ユニオンの森英一さんから、「デジタル化で働き方はどう変わる」と題する報告がありました。
<テレワークが一気に>
大手電機メーカーは、昨年4月の緊急事態宣言以降、テレワークを急速に進めましたが、労使協議が不十分なまま強行されたので、労働環境の不備、サービス残業、労働者の費用負担、心身の健康悪化などの問題が生じています。
NECが2020年5月に6万人を対象に調査した事例(回答者3万5,246人)によると、出社率は24%程度。「基本的に出社せず」59%、「毎日出社」は14%など。
日立製作所は「在宅勤務活用を標準とした働き方の正式適用」を4月から実施予定。
NECは、働く場所は「自宅」と「会社」の両方としています。
ルネサスエレクトロニクスは、「勤務地は自宅」を原則とし、出社する際には「理由書」を必要とし「出張」となります。
<労働者の受け止め方>
「生活にゆとりができた」「家族とのふれあいが増えた」「感染の心配がなくなった」等の歓迎の声もあります。日立システムズが社員約1万人を対象に実施した調査では、今後の勤務形態について「リモートワークをしたい」が33%、「出来ればリモートワークをしたい」は30%という状況。
電機情報ユニオンが集約した春闘アンケートでは、「労働時間があいまい」40%、家庭との両立が困難」22.1%「孤独でうつ病等になる」17.9%等の問題点も。
自宅が勤務地になったことで、「仕事と生活の切り替えができない」、「作業環境が不適」「同僚とコミュニケーションが取れない」「他の人が何をやっているかわからない」「孤独感に襲われる」「終始、カメラで監視されているよう」等の不安の声が。
<テレワークからジョブ型雇用へ>
電機業界は、在宅勤務制度を1999年から実施。2018年からは政府キャンペーン「テレワークデイズ」にも大々的に取り組んできました。今回のコロナウイルス感染拡大に伴うテレワーク普及を梃に、「ジョブ型雇用」への動きを強めています。
*日立製作所は、社員2万3,000人を対象に2021年4月から本格導入をめざし労使協議中。
*富士通は、2020年4月から国内課長級以上1万5,000人を対象に、2021年中には一般社員(6万5,000人)に展開予定。
*NECは、2020年11月「これからの働き方改革」と称してジョブ型処遇制度を労働組合に提案。
電機・情報ユニオンと電機労働者懇談会は、成果主義賃金や「ジョブ型雇用」制度の導入に反対しています。
<デジタル化の状況>
日立製作所は、2017年「人材マネジメント統合プラットフォーム」を発表し、個人基本情報に加え、報酬情報・パフォーマンスマネジメント情報(目標・評価)・キャリア情報などを管理しています。社員の行動を社員証に埋め込んだチップによりデータとして把握。
2011年開始のパナソニック4万人リストラ以降、電機情報関連産業では56万人超が退職に追い込まれています。
<技術革新を労働者のものに>
労働者が技術革新を積み重ねて生み出した「デジタル化」という技術発展を、労働者の生活と権利の向上のために用いるには、労働組合の役割が重要と指摘。
電機情報ユニオンは、*雇用と地域経済を守る *人と技術を大切に *平和産業に注力 国際労働基準の順守、を掲げています。
●神奈川労連の住谷和典さんからも報告がありました。
<政府CIO法の全体像>
*平井内閣府特命担当大臣
・国と地方を通じた情報システムの標準化・共通化
・デジタル社会のパスポートたるマイナンバーカードの活用。
*武田総務大臣
行政デジタル化の鍵であるマイナンバーカードについて、マイナポイント事業や健康保険証利用の開始を見据えてカード発行体制の強化
*内閣官房IT総合戦略室実人員153人の内、NTTや富士通など民間企業からの出向者は76人に上るとのこと。
<コロナ禍・デジタル化による雇用形態の変化>
*「限定正社員」「個人請負・個人自営」「ジョブ型」へ
・日立、富士通は「本格的なジョブ型」を導入
・テレワークを前提にした求人=書類選考はAI、面接はオンライン
●「AI革命」から始まり、デジタル化が及ぼす働き方への影響を聞きながら、何と人間が軽んじられている事かと思いました。
テレワークを追求していた企業においては、コロナ感染症の拡大はまさに実証の場を得た思いだったでしょう。デジタル化を一気に進めたい政府にとっても、GIGAスクール構想を促進させたい財界・政府にとっても同様です。
AIをめぐる状況は、人間がつくったものにより、人間が放逐されていくさまを見ているようでした。
人間を尊重する視点がなければ、これらの技術革新は、人間の営みを益々細らせていくのでは、という危機感が募ります。(2021.3.13)