●東芝が揺れています。
2006年米原発メーカーWH(ウエスティングハウス)社の買収、2015年粉飾決算の発覚、2017年4月WH破産法申請・半導体事業の分社化決定、3月期決算9500億円の赤字見通し・上場廃止の可能性、といった具合です。東芝関係者は「一筋の光も見えない」といいます。
そんな中で18日、東芝リストラ対策会議結成総会が開かれ、130人が参加しました。私も連帯の挨拶をしました。
東芝問題の本質ともいうべき興味深い講演がありました。「赤旗」の経済部記者金子豊弘氏によるものですが、印象に残った点を以下に。
●東芝問題の大きな要素の一つは、原子力事業に取り込まれたことです。
2006年、東芝が原発で世界を主導することを狙いWH買収を図った当時は、「原発ルネッサンス」といわれ、ブッシュ大統領(息子)が原発推進を狙った時期でした。
「国内の原発建て替え事業に頼っていては、事業は縮小する一方で存続の危機に陥る。世界のチャンスをものにするには、WH買収は必要」「WHは世界初の原子力潜水艦の原子炉をつくった会社であり、米政府の承諾が不可欠」などの経緯が当時のNHKスペシャルの放送内容を紹介しながら語られました。
日本政府も深いかかわりを持ちます。
資源エネルギー庁内調査会作成の「原子力立国計画」は、「海外市場への対応が遅れており(略)メーカーを中心とした関係者が内外の市場戦略をどう描いていくかが最大のポイント」と述べています。経産省関係者は東芝のWH買収を画期的な出来事と評しています。
東芝は2009年に「2015年までに全世界で39基の受注」と打ち上げ、福島事故後の2015年には「今後15年間に64基の受注を目指す」と発表。ところが実際に受注できたのは8基だけ。
さらに米国での原発建設に絡み建設工事を手掛けるS&Wも買収することになり、建設工事の遅れなどすべての損失を負う事になってしまいます。福島事故を受けて、追加の安全対策や設計変更を迫られ、工事は大幅に遅れていました。
東芝経営陣の度重なる判断ミスにより、東芝は危機的状況に追い込まれていきます。
原発事業の限界は明らかです。原発安全対策の厳格化は経済合理性を超えているといわれます。さらに事故の深刻な被害をコントロールする術を人類は持ち得ていません。
この状況にもかかわらず、安倍政権は原発をベースロード電源と位置づけ、原発輸出をアベノミクスの柱としています。東芝は今に至っても19年度に向けて、原子力の売り上げを500億円増の2000億円にするとしています。
●大きな要素の二つ目は、東芝が物言えぬ会社であることです。
これは自然にできたものではありません。公安警察官を労務担当者として雇い入れ、社員を監視する秘密組織をつくり、自主的な労働組合活動をする社員を監視・排除し、見せしめ的差別を行ってきました。
粉飾決算を徹底的に調査し、東芝の闇が明らかにされていれば、このような泥沼の事態には陥らなかったという指摘もありますが、物言えぬ会社は誤りを正す力を持ち得ません。
東芝の共産党員敵視・労働組合敵視・権力と結びついた労務管理が物言えぬ組織の土壌としてあります。東芝はかつて松川事件や共産党の緒方靖夫宅盗聴事件にも大きな関わりを持ってきました。
●今回の東芝問題は偶然ではないという事を、講演を聞きながら強く感じました。
東芝問題を聞きながら、安倍首相や現在の日本の姿が重なることが度々ありました。今の日本に突きつけられている現象でもあります。
東芝経営陣の誤りのつけを働く人や多くの関連会社に負わせることは許されません。総会は、労働者の雇用・東芝の技術・地域経済を守ること、企業の社会的責任を果たさせることなどを確認し、役員を選出しました。(2017.6.18)