女性労働問題研究会の総会と女性労働セミナーに参加しました。この研究会は研究者と労働者が共同して進めていることが特色です。
セミナー30回を迎える今年は、伊藤セツ(昭和女子大学名誉教授)さんの「女性労働問題のオリジナリティーと変遷」と題する記念講演から始まりました。民主主義科学者協議会が1946年に発足し、48年には婦人問題研究会が作られます。研究会の中につくられた女子労働グループがこの研究会の始まりです。アカデミズムとともに常に女性労働者の現実を重視してきました。歴史を振り返りながらこれからの在り方を探りました。
「仕事と家庭から排除される若年女性の貧困」「生きづらさ、働きづらさに悩む若年シングル女性たち」「格差・差別にあえぐ派遣の女性労働者―エンパワーメントの方法を探る」などの報告がありましたが、最も印象的だったのは「日本では政府の所得再分配が貧困を深める」と題する東京大学社会科学研究所教授・大沢真理さんの報告でした。
大沢さんは様々なデータを駆使し、日本の生活の困難を解明し、主に以下の点を結論づけています。
◎日本は、OECD諸国の中で唯一90年代後半以降賃金が低下。
◎税・社会保障などによる再分配機能が弱いため、貧困削減率が低い。(下記グラフから、日本はひとり親家庭の負担率と単身者の負担率の開きが一番小さい=再配分機能が小さい)
◎成人全員が就業する世帯(共稼ぎ・ひとり親・単身者)及び子どもにとって、所得再分配が貧困を深めている。
新自由主義が大手を振る中で、所得格差が広がっている現象は、ある程度認識されています。ここまでは資本主義の現象としても、日本の「悲しさ」は、政府がその貧困と格差に拍車をかけていることです。
ひたすらコスト削減を求めて雇用を破壊する企業群とその応援団と化している政府の下で日本の暮らしは追いつめられています。
格差是正のためのルール強化が必要な所以です。(2015.8.29)
参考]OECD Taxing Wages 2015「租税年鑑」 (英語版)。