●川崎市議団主催の学習会「奨学金問題から見えてくる格差と貧困―自治体に何ができるか」に参加。
講師は、大内裕和武蔵大学教授。
●大学生をめぐる状況は、まさに「5重苦」状態だなと思いながら聴きました。
▲一つは、上昇し続ける大学学費。
1969年、入学費含め国立大学は1万6,000円、これが2018年で81万7,800円と51倍、私立大学は22万1,874円に対し133万円6,033円と約6倍。(ちなみにこの間の物価指数の変動は約3倍です。大学学費の値上がりの異常さ!)
2019年成立の「大学等における就学の支援に関する法律」は、低所得世帯に限定し、対象は9%のみ。
▲二つ目に、改悪が続く奨学金制度。
*1984年日本育英会法全面改悪により有利子枠を設置。(無利子貸与制度を補完するものとして財政が好転した場合には、有利子制度は廃止含め見直すとの付帯決議あり)
*ところが、1999年に財政投融資・財政投融資機関債で運用する有利子貸与制度をつくり、有利子枠はその後の10年間で約10倍に。
*2007年には民間資金の導入。
*教育職返還免除制度・研究職返還免除制度も廃止。
これらの結果、
1998年度:無利子奨学金39万人、有利子奨学金11万人、計50万人。
2012年度:無利子奨学金38万人、有利子奨学金96万人、計134万人。
*年利10%の延滞金までつき、利息収入と延滞金は銀行と債権回収会社へ。まさに奨学金は「金融事業」かつ「貧困ビジネス」に。
自殺の動機に奨学金返済苦が10人。
*卒業後の返還の困難から奨学金利用を差し控えるケースも。
▲三つ目に世帯収入の減少です。
1998年544万円→2016年428万円。
奨学金利用者の割合、1998年の23.9%→2012年には52.5%へ。
仕送り額10万円以上、1995年62.4%→2019年27.9%。
▲四つ目に、バイトの過酷さです。
低賃金であるにも拘らず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課せられ、学生生活に支障を来たすほどの重労働を強いられている。(休みなし、ノルマこなせなければ買い取りなど)
▲五つ目に、安定した職業就業の困難です。(これは私の思うところ)
生活の不安とともに奨学金返済がのしかかる。
これらの背景にコロナ禍のバイト先減少が加わり、食料支援プロジェクトが出現、学生の貧困も可視化。
●この状態に対し、奨学金制度改善への運動も進んでいます。大内先生も大きな役割を果たしています。
▲2012年「愛知県学費と奨学金を考える会」スタート
▲2013年「奨学金問題対策全国会議」結成
▲2014年度予算における制度改善
・延滞金賦課率10%→5%
・返還猶予期限5年→10年
・無利子奨学金の増加と有利子奨学金の増加
▲2017年 給付型奨学金先行実施
▲2018年 給付型奨学金正式導入
・住民税非課税世帯、一学年2万人対象
・学校推薦
・区分により2~4万円を給付
▲2019年「大学等における就学の支援に関する法律」成立(とても不十分)
▲2020年「学生支援緊急給付金」
・住民税非課税世帯学生20万円、それ以外の対象学生10万円(このような選別主義では大学生活を続けられない学生の大量出現の危険性あり)。
<今後の課題>
▲人的保障の廃止
▲猶予期限の撤廃
▲延滞金の廃止
▲返済負担軽減
<自治体での取り組み>
▲奨学金問題で地域ネットワークの結成
埼玉・愛知などで結成されている
▲県・川崎市でも独自奨学金制度を(市は一定要件の下で貸付制度あり)
▲県立・市立大学無償化を
▲職業訓練の充実を
●学生の貧困、認識しているつもりでしたが、それ以上に深刻でした。とりわけ学費の異常な値上がりと奨学金の悪質化、政治がここまで若者の未来を封じてしまうのか、と打ちのめされるような気持でした。
奨学金問題で学生に呼びかけるときは必ず交通費を保障しているという話も強烈でした。私もかつて公共職業安定所でバブル崩壊時に、「面接に行きたくても交通費がない」という求職者と接してきましたが、30年を経て今、学生がその状態ということです。
共産党が掲げる教育費軽減政策をより具体化することとともに、奨学金制度の改善は急務です。未来を、希望とともに語れるようにするために。 (2023.12.1)