●平塚保健所に次いで、神奈川県衛生研究所を訪れました。
衛生研究所は、関連行政機関と連携しながら、県民の健康保持・増進、健康被害の発生予防・拡大防止などに取り組んでいます。
今回問題となっているコロナウイルス検査については、県域保健所・センター8か所及び市単独保健所2か所(藤沢・茅ケ崎)からの依頼検査、計10か所の検査を行っています。
●微生物部長から、コロナウイルス検査の流れについて伺いました。
検体採取
⇒搬送
⇒衛生研究所受け取り(検体採取から数時間)
⇒検体の整理・集約・採番・書類整理・帳簿作成(1時間)
⇒検体前処理(1時間)
⇒検体核酸(RNA)抽出(1時間)
⇒リアルタイムPCR試薬調製(1時間)
⇒リアルタイムPCR反応(約1時間半)
⇒結果確認
⇒報告書作成
⇒保健所へ結果速報通知(検体受け取りの翌日)
⇒正式書類送付(1か月後)
●これらの過程では、採取後結果が確認できるまでに7~8時間を要します。「検査の時間がかかる」と言われる内容はこういう事でした。
ちなみにスマートアンプ法が、この一連の流れと違うのは、リアルタイムPCR反応の段階です。この工程が一時間短縮され、30分で済みます。
但し、それまでの受け取りから試薬調整までは、同じ工程を要する為、全体で6~7時間はかかる事になります。
この新しい方法がなぜ使われないのかという声もよく聞かれますが、まだ評価段階という事です。
●現在、リアルタイムPCR反応器2台で検査を行っています。
習熟した人が関わり、一日フルに前工程を進めて行けば、この機械を2回×2台=4回の使用が可能となるそうです。
一回のPCR反応には、44個の検体を入れることが可能ですから、計算上1日の検査数は176件となりますが、各地からくる検体は時間もバラバラで、中には急ぐものがあるなど44個の検体が揃うまで待つことはできません。よって平均的には1日当たり検査数は約60件ということです。
保険適用となり、医師の判断で、民間検査機関に検体を回すことも可能になっていますが、大きな変動は認められないとのことでした。
今後、検査数を引き上げるためには、病院で直接検査できる体制を整えること、また検体採取後、同一場所で検査を可能とする集約化も有効ではないかとのお話がありました。
●当面の対応としては、現在の衛生研究所内検査機能の拡充というよりは、検査業務を他の機関と分け合う、あるいは、新たな検査場所を設けるという方法が提案されていたことになりますが、今回のような検査の遅れを生み出さないために、また疫学調査などの実践が、より的確に予防に結び付くためには、衛生研究所の機能拡充が不可欠です。
住民の健康や安全を脅かすのは、今回のような感染症だけではありません。
添加物・農薬・遺伝子操作などによる食の安全性への不安、化学物質による汚染、放射性物質による汚染など、新たな脅威も増大しています。これらに対しても保健所との連携がより求められています。
保健所とともに、この分野を担うには、長期的な人材の養成が不可欠です。医療体制・公衆衛生体制の拡充は住民の誰しもが願う事です。(2020.4.9)