●2月8日、素晴らしい和解勧告がありました。私は予定が詰まり、傍聴受付には間に合わず、報告会の会場で結果を待ちました。
●渡辺航太君が、バイクで帰宅途中、電柱に激突し死亡したのは、2014年4月。
和解勧告は、被告グリーンディスプレイが、仕事で蓄積された疲労と過度の睡眠不足から、航太君のバイク帰宅は危険であることを承知していたにも関わらず、それを回避する努力を怠ったとして安全配慮義務違反を認定しました。
直前の21時間連続勤務、10日間については最大23時間拘束・平均13時間51分拘束、2か月間、6か月間などをとっても同様の状態で、心身に対する負荷が極端に高くなっていることにより引き起こされた事故であると認定したのです。
○和解解決金は、過失相殺し更に労災補償を控除した7591万5412円。
○「安全配慮義務が通勤方法についても求められること」を認めたのは、画期的でした。
○更に再発防止策としても徹底し、11時間のインターバル確保を就業規則に明記し、周知徹底を図ること、実施状況をHPで公表することなどを明示しました。
○過労死・過労自殺に続き、過労事故死も裁判規範としても社会規範としても類型化されました。
●裁判官の魂に触れることができた勧告でした。
「亡航太の地球よりも重い声明を代償とする貴重な教訓として、(中略)法令遵守の企業姿勢を明確に社会に表することは、とても重要」として「被告が(中略)過労死を撲滅することを約し、二度と過労事故を生じさせないことを宣言して、社会的責任を果たしていく」ことを期待しました。
航太君と同年齢の息子さんがいるという裁判官の、過労死をこの世から無くしたいという心情が随所にあふれていました。
●川岸弁護士は、「司法の良心を覚醒させたものは何か」として、要旨次の指摘をしました。「お母さんの魂を削った訴えが、多くの市民やメディアを突き動かし、多数のメディアで報道され、非公開和解期日も調停室を包囲。全国から集まった15,000を超える署名提出」などを挙げ「航太さん、淳子さん、弁護団、支援者、世論、そしてこれに動かされた裁判官、みんなの力で勝ち取った」としています。本当にその通りです。
そして私はここに、常に寄り添った国民救援会や神奈川労連・川崎労連、POSSEの方々の力が大きかったことを添えたいと思います。
●お母さんの訴えも胸に迫りました。
「私は過労死のある日本社会を恥ずかしく思います。私達は生きるために働いています。自由で幸せな生活を求めて働いています。そのためには、何よりも命を守ることが大前提です。」「人間の限界を試すような働き方で、生産性を上げていくという考え方は間違っています。」として過労死のない社会を築くことが「未来への責任」だと訴えました。
息子の死の悲しみから社会のあり方を問い、あるべき社会をつくる決意まで語っているのです。
でもその傍らで子を失った喪失感は、何を持ってもぬぐえないことを思います。私はお母さんのことを考えるといつも、娘を失った自分の思いと重なり涙を抑えることができません。
そしてその度に思います。人間の力で救える死は、決して生じさせないと。
●私は、次の地元の予定があり、心を残しながらこの後退席しました。依頼された挨拶も時間的にかなわず、お母さんや支援した皆さんと言葉を交わすことも十分にはできずとても残念でした。こういう時は本当に込み合った予定が恨めしく思えます。(2018.2.8)