●2日、両市在住者等に状況を伺いました。
昨年10月に任意協議会が立ちあげられ、今年8月には協議を終了し、来年には法定合併協議会を設置する予定です。
合併が進められようとしている大きな要因は、小田原市が中核市移行に意欲を持っていることです。中核市要件は、人口20万人以上ですが、小田原市は現在19.3万人、人口要件を満たすためには吸収合併が必要ということになります。
●ここで確認しなければいけないのが、中核市になれば住民はハッピーなのかという点です。
中核市は、県から多くの事務・権限が移譲されます。代表的なのが保健所機能です。保健所に対し求められることは、広範囲かつ専門的です。その専門性確保には市内1ヶ所の体制では、不十分という指摘があります。政令市や県所管域のような複数所体制でこそ維持される情報や量が、専門性の維持に役割を果たしていると言います。
事務・権限の移譲により、市の財政的負担・人的負担が増大することは言うまでもありません。
また委譲に関わる大きな問題は、周辺の県所管域である箱根町・湯河原町・真鶴町の住民に対する保健所サービスをどこが担うのかという点です。最近の例では、茅ケ崎市の保健所政令市移行に際し、近隣の寒川町の保健所業務を県が茅ケ崎市に委託しています。慣れない保健所業務を担う新しい中核市に県域のこれらの地域を委ねるとしたら、無責任な事態になりかねません。
●更に確認すべきは、合併にどのような効果があるのかという点です。
「平成の大合併」で、市町村数はおよそ半数になりました。その結果は、総務省がまとめた「平成の合併について」(2010年3月)でさえ「各種アンケート等によれば、住民の反応としては『合併して悪くなった』『合併しても住民サービスがよくなったとは思わない』といった声が多く、(中略)相対的には合併に否定的評価がなされている」とされています。
先に合併を行い政令市に移行した相模原市は、周辺部の過疎が進んでいるといいます。わかりやすい例として町役場があった地域が役場を失い、人の集積も失っていくという事です。自ら拠点を無くし、まちを衰退させているという事にもなりかねません。以前に相模原市在住者から「政令市になって無理を重ね、いいことは一つもない」という言葉を聞きました。
●2016年度の普通交付税は、小田原市7億7500万・南足柄市5憶7700万です。合併すれば5年間はその合計額が新小田原市に交付されますが、6年目以降は順次減額され、11年目には1市としての交付となり、減額となることは明らかです。
合併反対を掲げる「南足柄市と小田原市の合併を考える会」も4月に発足し、集会や署名を行うという動きもあります。
規模拡大は住民サービスの保障とならず、大量の県事務移譲などは、市の重しとなりかねません。地域の特性生かした住民が主人公の地方自治体とは対極にあると思います。
どこに住んでも同水準の住民サービスを保障するために、地方交付税制度があります。住民自治と地方自治を保障していくのは国の責任です。そしてそれを支えていくのが県の役割でもあります。県が、県西部のあり方をどうとらえていくかが問われています。(2017.8.2)